かつきよ

フリー・ガイのかつきよのレビュー・感想・評価

フリー・ガイ(2021年製作の映画)
3.9
ずっと楽しみにしてた2022年の話題作!!!

ネットゲームを題材にした笑あり涙ありのエンタメ作品で、ライアンレイノルズが演じるゲームのモブキャラが、ある女性アバターに一目惚れしたことをきっかけにして、どんどんと独自進化を遂げていくAI進化モノでもあるので、私の大好物ジャンルでした!!

お金をかけて作られているのがわかる豪華さ。ネットゲームが題材という事で、現実にあるゲーム(世界観はグラセフ、他APEX、ロックマンの武器など)のオマージュも盛り込まれており、知ってる人は各所でニヤリとできます。
製作の20世紀スタジオがディズニーの子会社という関係柄か、MCUシリーズや他傘下の映画からの小ネタもあり、ユニークさはピカイチ!

●エンタメとしては150点!

これぞTheエンターテイメント!という映画作りで、ゲームだからこそ、を逆手に取った現実離れした無双感とか、スピーディな展開の爽快感がたまりません!
主人公含めたキャラクターは役者さんが演じていますが、現実パートになるとモニタに映される映像は実写のはめ込みではなく、ライアンレイノルズや他役者の演じるキャラクターに似せてるキャラクターCGが映し出されていて、ゲーム画面!って感じになっているのとか、こだわって作ってるなと思えて好きなポイントの一つ。
ちゃんとしたテーマを盛り込み、ドラマ性やメッセージ性がありながらも、コメディ映画と言っても差し支えないくらいに各所各所に笑える要素を盛り込んでくれる軽快さも、とってもお気に入り!
笑えるし、感動できるし、泣ける……まさにエンタメ映画の理想系……!

●説得力のある脚本!!

ここもポイントが高いのですが、モブキャラがなぜ感情を持つのかや、何故ルーティンから外れた思考をするのかとか、なぜ独自進化を遂げたのかって部分、ちゃんと理由づけてある設定が前提としてあって、説得力があったこと!
たまーに、こういう根幹の部分を「そういうもの」と漠然と設定していて、理由づけや設定が宙に浮いている適当な映画があります。
その点、フリーガイはその根幹の部分の理由づけをしっかりとしてくれていますし、ある種その要素がラストの伏線にもなっていたりするので、クオリティの高いいい脚本だなと思いました。

●宣伝から面白いから是非チェック!

なんならこの映画、トレーラーとか予告企画動画の時点で、終盤のとあるキャラクターの役者(?)のインタビュー風動画をあげていたり、デッドプール(主演ライアンレイノルズの代表作にして同演者キャラ)がコーグ(マイティ・ソーシリーズの登場人物)と一緒に本作のトレーラーを鑑賞して感想を垂れ流す動画を上げていたり、かなりユニークな打ち出し方をしていました。どちらも鑑賞後にYouTubeで見ましたが、面白かったです笑
内容補完的な情報があるわけではなく、エンタメ性100%で作られてるので、その感じもまたいいです。見ても見なくても本編は面白く楽しめる!
ライアンレイノルズはキュートでチャーミングなイケメンなのに、デッドプール本編でも、今作の予告動画でも、もちろん今作の本編でも、なかなかにネタ的な役回りが多くて笑えます

●元ネタがわかると面白い!
●ユニークさが光る……けど知らなくても◎

元ネタが多岐にわたるネトゲ題材という点では「レディプレーヤー1」を彷彿とさせるけれど、レディプレーヤー1はオマージュや引用が膨大でライトからニッチまで網羅してたあたりが、ガチヲタの本気盛り感満点でした。個人的に知らないネタも多く、調べ尽くす事もできず引用元が飽和していましたし、途中元ネタがわからないと乗り切れない流れがガッツリ本編中に組み込まれているのに対して、フリー・ガイの方はわりとライトで有名なネタが多く、最悪元ネタを知らなくてもそんなにストーリー上でキーになるレベルで関わってくるオマージュがなかったので見、かなりやすかったです。

●でもオチに関しては……

大前提として、大変面白く、本当に満足度の高い高クオリティの映画だったのですが……
オチに関しては若干違和感
見る限り、ほとんどがの方が、まるで何も引っかかることがない完璧な映画だったかのように感想を書いているので、正直私はびっくりしました。
もちろん私もすごく大好きで、価値のある映画だと思います。

でも、最後のオチ、あれでいいんですか?まるでハッピーエンドにされているけど、あれがこの映画で投げかけられた倫理的なクエスチョンに対するアンサーでいいのでしょうか……?

●総評

ここ近年のゲーム系エンタメ映画の最高作品!
笑えるし泣けるし感動できるし、これ系好きなら間違いなしの傑作!
個人的にはオチだけうーんと首を捻ってしまいましたが、オチの好き嫌いは完全に好みの問題なので
かなり良作映画だったなと思います。



※以下ネタバレ有り感想

















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※ネタバレ有り










●オチに関して

オチに関してはなんとなーくもやもやしていたのですが、その理由が3分ほどで完璧に説明されている動画を見つけたので紹介しておきます

https://youtu.be/6k4fimeubEk

有名な活動家の岡田斗司夫さんの感想切り抜きですね。
さすがプロ、簡潔で論理的に解説されております。自分のモヤモヤの正体が全て言語化されていて、この動画何度もリピートしたくなってしまいます。

●何に違和感を持っていたのか

結局、キリスト的な制約がどうだとか、それが真実でもそうじゃなくても、他の原因であっても関係ないんです。
私が違和感を持ったのは、ガイ君が結ばれなかった事でも、急にミリーとキーズが結ばれた事でもないんです。そこに至る道筋の〝不自然さ〟なんですよね。

フリーガイって、まず最初、ガイが一目惚れしてシステム的なルーティンを外れるところから物語が始まるじゃないですか。
この映画にはいろんな要素があるけど、本筋としてはAIのモブキャラが自由意志を獲得し、機械やモブキャラクター的なシステムではなく、人間と同じような感情や個性、自由を獲得した存在へと成長していく様を描いている作品だと思うのです。
それを受けて、現実世界にいる人間たち、プレイヤーは「これはただ事ではないぞ!」と思うし、応援したり、注目したり、盛り上がっていくわけですよね。

途中、「自分は現実の人間ではない」ということに気づいて絶望するガイ
自分にとっては今まさにこの瞬間が現実で、それ以外の何者でもないというバディの真理をつくセリフ。

自分の恋心や、思想、欲望、思考、行動、全てが彼にとっての「現実」であって、作り物でもなんでもなくそれが真実……!
すごく簡単なことのようだけど、自由ってすごく難しい事ですよね。
私たちだって、自由とはいいつつ、全て自分で選んで自分の意思で行動しているのかと言えば、必ずしもそうではないと思います。
でも、何かに従ってる時も、誰かに導かれたとしても、その場に立ってその瞬間生きているのは、自分の意思があるからで、自由の本質って、それがどんなことであっても、個人の意思をもって行動することに他ならないのではないかなぁ。

そんなことを考えさせてくれる映画なんです
だから途中までは本当に素晴らしい。
こういうテーマってありふれてて、珍しくもなんともない展開だと思います。それを、こんなにもユニークでパワフルに描いてくれるこの映画、とっても素敵……!なんですけど……
だからこそ、あのオチはなんなの!?

●肝心のオチ
●ガイはただの「ラブレター」の役割

最終的に、ガイは「自分にはプログラムした人がいるはずだから、この恋心はその人のもの」っていうのをミリーに伝えるわけですよ。
それで、ミリーはハッ!として、今まで(その直前も)見向きもしていなかったキーズのことに気づいて「え!私のことをずっと見ていてくれた!彼が私のLOVE!」ってなってキスしに走るわけです。

解釈の仕方によるとは思いますが、単純に受け取ると、ミリーはガイのこと本気で好きだったわけだけど、それは結局ガイ本人を好きになったんじゃなくて、ガイを通して、プログラムしたキーズからミリーへの愛を感じていたからガイに惹かれたんだって構図になるわけです。
ガイもガイで、自由意志を獲得したにも関わらず、自分の恋心はキーズにプログラムされた結果だから、「本当にミリーを愛してるのはキーズだよ、気づいてあげて」ってミリーに伝えるわけです。
これは、敵に塩を送る行為ですよね。普通あり得ないんですよ、こんなことするのは。
このオチにするために必要な材料は「自分ではミリーを幸せにできない……でも、君が好き」「現実の人間じゃないからミリーと対等ではいられない……それでも君が好き!」「自分の恋心も本物だし、誰よりもかけがえがないけれど……君のことを心から愛しているからこそ、彼女の幸せのためには自分じゃなくてキーズと結ばれた方が幸せだと思うから」とか、そういう葛藤とか苦悩があってこそなんです。
でも、私は劇中にそう言った人間らしい苦悩や葛藤の表現・描写を見つけることが出来ませんでした。
それよりか、まるで「自分の恋心は本物じゃない」「自分の恋心はプログラムした作者のもの」「自分の恋は偽物で、作者の恋が本物」というように捉えているように感じてしまうんですよ、葛藤や苦悩の描写の不足のせいで。

自由意志を獲得して、人間に並ぶ一種の生命体としての成長譚を描いておきながら、最後の最後ではガイは「装置」の様な使われ方をしているんです。例えるなら、ガイ自身が「キーズからミリーへのラブレター」なんですよ。
ガイがモブキャラのまま終わる物語ならこれは素晴らしい脚本だし、最高のオチだったと思います。でも、映画全体を通して訴えかけてきたことは、ガイはモブキャラではなくなった、自由意志と感情を獲得した人間に並ぶ存在だということ。なのに道具に落ち着くのはおかしい。

ミリーに一目惚れしたきっかけはプログラムだったかもしれないけど、冒険や世界の危機を通して、ミリーという人間に触れて、追いかけ続けて、その恋心は「プログラムだから」「自分はキャラクターだから」で片付けられない本物の感情になっていて然るべきなんです

その本物の感情が、あんなふうにサラッと片付けられていいわけがない。
最後のガイは聞き分けが良すぎるし、人間に従順すぎるし、まるで人の作ったもの、人より下のものって感じで、人権の様なものが感じられませんでした。
なんでそんな脚本にしたのかなってもやもやしてたんですが、岡田斗司夫さんの言ってた解説が、やっぱり真実なのかなぁと思うと納得です。

だとしても、ガイには最後笑って欲しいけど、あんな軽い笑顔じゃなくて、失恋して大号泣した後の笑顔であってほしかった。
作中ずっと人間的で自由意志を持っていた魅力的なキャラクターだったのに、最後のシーンだけが、機械的で残念でした。
ハッピーエンドはハッピーエンドだけど……え、本当にこれでいいの?これが、この映画の大団円なの……??
と、私は一石を投じ続けたいです。


●その他雑感


・ガイの騒動に対してコメントをつけたり反応してるゲーム実況のYouTuber?たち、妙に印象的だなーと思っていたのですが、本当に海外で活躍されているYouTuberの方々だったんですね!これは豪華!
日本だと、ヒカキンとか?キヨとかが出演してる感じなんですかね

・やたら目立つキャラいると思ったら、チャニングテイタムさん!!!みんな大好きチャニングテイタムさん!!!!!!!すごいキャラやらされてますね!!😂当たってるとか言われてるし、プレイヤーのせいとはいえ、とんでもないこと言わされてるし……笑
ライアンレイノルズ氏と、チャニングテイタム氏のほぼ0距離ショット美味しいです🤤

・ロックバスターもびっくりしたけど、キャプテーンマーベルの盾にはびっくり!その後ほんの一瞬だけどごクリスエヴァンス本人が出演されるのもびっくり🤣

・ヴィラン役のタイカワイティティ監督、存在感ありすぎ!!嫌なやつは嫌なやつなんだけど、若干カッコ良すぎる
最後のサーバー攻撃のシーンも、ワイティティ監督自身が画になってた気がする。ファン多そう

・バディいいやつ。メインヒロイン、バディって思ってる人絶対にたくさんいる……。別れは「ウワーっ!」となったけど、どうせまたあとで再会できる感じはあったので、そこまで感動はしなかった
最後ミリーと別れた後ぬるっと出てきてびっくり
この2人が恋に落ちるルートで終わるのかと本気で思ったけど、普通に友達(というか名前通りバディ)で終わったのがまあいい感じ

・キスのコマンドはないのに、キスしてきたガイくん、それはちょっとロマンティックで、あのシーン好き

・でも、キスのコマンドは存在しないのに、なんで最後ガイくんの記憶を呼び起こそう!ってなった時にミリーはガイくんにキスできたんだろう
記憶喪失から、キスで全部思い出す流れ下手だけど好きでしたわ
頭から、ルーティンに外れたなんか色とりどりの図?がぶぁぁあふぁぁあぁぁぁって湧き出すシーン、綺麗で印象的ですの


【参考】

https://youtu.be/ZCmI4y9OhvA

→小ネタ集 簡潔でわかりやすい
 好感度高し!

https://youtu.be/Wbpkv6LmzMg

→同じく小ネタ集
 上と被ってるのもあるけど、カメオ系の解説がより詳しかったです
かつきよ

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