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トムとジェリーのHKのレビュー・感想・評価

トムとジェリー(2021年製作の映画)
3.0
観ると腹が立ちそうで避けてきたのに結局気になって観てしまいました。
もちろん“トムとジェリー” は大好きで、どのくらい好きかというと世界のアニメーション史上今でも最高峰だと信じて疑わないくらい好きです。
ただし、それはMGM時代(1940年~1958年)の映画の前座用に製作された7~8分の劇場用作品群のこと。
ハンナ&バーベラの純正のみで、明らかにタッチの違うチェコ作品や元ワーナーのC・ジョーンズの作品も一旦除きます。

蝶ネクタイをつけたトムとジェリーが仲良く手をつないで登場する後のTVシリーズは個人的には“トムとジェリー”と認めません。
“トムとジェリー”がケンカをしないのは論外ですが、クオリティも違いすぎますから。
クオリティというのは、絵、動き、音楽、ギャグなど全てにおいてです。

で、本作も万が一の奇跡の可能性を捨てきれずに観てしまいましたが、やはりトムとジェリーというキャラの器だけを借りて映画の脇役に配しただけの残念な作品でした。
でもまあ本来の“トムとジェリー”を知らないお子さまにはそこそこ楽しめるファミリー映画だったとは思います。むしろ実写部分の方が楽しめたかも。モレッツ嬢やペーニャ氏に非はありません。
でも子どもたちにこそニセモノではなく本物を観せたい気も・・・

まあでも最悪な蝶ネクタイ時代の延長ではなく、全盛期には遠く及ばないながらも当時のギャグやサブ・キャラを散りばめてありオリジナルへのリスペクトは感じました。
ただソックリさんが上辺だけマネしてるようで血が通ってないというか、タランティーノのレオーネへのリスペクト同様、足元にも及ばないけど憎めないというか・・・。

で、口直しに娘と一緒にMGM全盛期の作品群をDVDで観ることに。
細かな仕草と表情、絶妙な悲鳴のタイミング、一発では終わらない連鎖するギャグ、映像とピタリとシンクロする音楽、リアルな物理的描写とその真逆の描写、五感に訴えてくる生理的あるある感。
これらの相乗効果はもう芸術品。
やっぱりメチャクチャ面白い。

昔の劇場ではディズニーアニメに子供の笑い声があふれ、トムとジェリーが始まると大人の笑い声がそれをかき消したそうです。
そうなんです。トムとジェリーは本来子供向けじゃなく、大人が十分楽しめる作品だったんです。それが今や子供向けになり下がってしまったのが悲しい限り。

結局ほとんどこの映画の話をしませんでしたが、あるシーンでハンニバル・レクターのごとく体を拘束された“ドルーピー”を発見。
これまたオリジナルのテックス・アベリーのDVDを引っ張り出して見始めたらもう止まらない。
HK

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