ひらまさ

犬王のひらまさのネタバレレビュー・内容・結末

犬王(2021年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

犬王という実在する能楽師と、犬王と共に物語を作っていった琵琶法師・友魚との歴史の影に隠れた"芸能"に生きた者たちの物語。

浅学すぎて見終わった後に色々と調べて知識を補完した作品でした。
まず南北朝時代の色々も劇中で説明はありましたがうろ覚えすぎて調べたり...。
序盤に友魚は平家の呪いのかかった妖刀により、父は腹を切られ友魚は目を潰されてしまいます。
この時点で結構ファンタジーみがあるなあ...と思ったりもするのですが、犬王自体も父親の能への執念により面の呪いを受けた忌み嫌われた子でありこの2人が出会うのもある種運命的なものだったのだなと思います。
その後盲目となった友魚は妖刀を探せと申し出た政府の者への恨みを抱えながらも旅に出て同じく盲目の琵琶法師と出会い、その道を行くのですが...。
ここの盲目となった友魚の感じる映像が美しいです。歩いた道が描かれていき、触ったものが映像として浮かび上がってくる。
劇中には琵琶法師たちが厳島神社に集って演奏する場面があるのですが、このシーンも広島県民としては細かくて美しくて嬉しくなりました。
神社の床板の隙間から海が見える感じとか...。

犬王と友魚が出会うシーンも美しいです。ダンスのステップもきれいに作画されていますし、踊る犬王と画面に映る星空がきれいでした。
この作品は犬王が平家の情念のこもった魂を能であの世へ送ることが活動への起点となっています。
ここも浅学だったのですが、能とは幽霊が登場人物となることが多いのですね...ある種平家の伝記のようなものなのかな。
しかしどの時代にも表現への圧力はあるようで...。思い思いに犬王と友魚、互いの表現を貫き通していたふたりは政府の圧に屈してしまいます。
2人はかけがえのない友人同士だったはずなのに、犬王は義満の寵愛を受けもうふたりで能を作ることができなくなってしまった。
このあたりはすごくやるせなかったです。友魚を守るために代わりに斬られた師匠も...。どんなに立場が変わっても師弟愛を貫き通す姿に心を打たれました。

しかし、ラストシーンで彷徨っていた犬王と友魚・2人の魂は邂逅します。
そこも美しくてなんとも...死してまた一緒になれるエンドの作品は大好きです!
教科書に書かれている歴史や文化は一側面だけであり、もっと掘り下げていくときっともっと面白い歴史の変化が描かれているのだろうな〜と感じられた作品でした。
ただ、ちょっと曲の間延びしてしまっている感も否めなかったこととやはり異形のビジュアルである犬王に惹かれてしまっていたところがあるのでこの点数となりました。
しかし犬王役のアヴちゃん、歌もめちゃくちゃうまいし幼少期から青年期への演技も素晴らしく...また何か演技して欲しいなあ。
ひらまさ

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