なべ

ガリーボーイのなべのレビュー・感想・評価

ガリーボーイ(2018年製作の映画)
3.3
恥ずかしながらこの映画の予備知識がまるでなく、インド航路を行き来するガレー船の漕ぎ手である奴隷の少年の話かと思ってたw あるいはそれになぞらえたカーストの最下層からの成り上がりストーリーかと。全然違ったw(まあ、半分当たってるんだけど)
いつもの歌って踊るインド映画とはまるで違ってミュージカルパートはなし。そのかわりラップがずーっと流れてるというね。テンポこそインド映画らしくゆっくりだけど、趣はまるでハリウッド映画のよう。
舞台はムンバイ。主人公は貧民窟に住むカーストの最下層のムスリムだ。
相変わらず、カビの生えた嘘のような価値観で暮らす市井の人々に唖然とする。これが現代だとにわかには信じられない。息子の才能や価値を認めず、自分の知っている権威が認めるまでまともな評価すらできないというアホな父親。そのくせ、愛人を自宅に引っ張り込んで重婚をキメるという人でなしでもある。ふー、書いてて鬱になるわ。
ぼくは日本のラップが嫌いで、リズミカルな駄洒落としか思えない。いや、もちろんそうじゃないって反論は正しいです。そこでゴネるつもりはありません。ただ、社会の最底辺で、楽器も買えず、譜面も読めず、業界へのコネもなく、ただ言いたいことだけは胸の中にあふれんばかりにある。そんな連中がパッションと言葉のみを武器に勝負するあのラップと同じものには思えないのだ。だからあれはアメリカ独自のカウンターカルチャーで、他の国でのローカライズは無意味だと思ってた。
ところがだ。このガリーボーイを見て考えを改めた。同じじゃん!スラムじゃん!いやもっと切実じゃん!そりゃラップにハマるわ。いや、お前らこそラップやれ!
のし上がれ!ラップで世界をひっくり返せ!
うん、まさにそんな映画でした。
ストーリー的には王道過ぎて、ひねりも意外性もないけど、インド映画だからそこは目を瞑ろう。
ただし、ムラドの暴力的なカノジョだけは平凡なストーリーのなかでひときわ輝いていた。富裕層だけど、身分制度をものともせず、凛と生きてるあの娘にインドの未来を見た。あの娘が(ムラドより)大好きだ!
てかムラドおっさんにしか見えねーし!
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