せーじ

最初の晩餐のせーじのレビュー・感想・評価

最初の晩餐(2019年製作の映画)
3.6
241本目は、久しぶりに新宿ピカデリーで鑑賞。
週末午前中ということもあるのか、五割ぐらいの入り。客層はおそらく朝ドラ経由で興味を持ったのであろう、中高年のおじさんおばさんが中心。

…という自分もそうなのですが、現在放送中の朝ドラ「スカーレット」にドはまりしてしまい、そういえば戸田恵梨香さんってどんな映画に出ているんだろう…とFilmarksを調べたところ見つけたのがこの作品でした。浅野忠信さんや染谷将太さんも出るのならば、観たほうがいいだろうなと思い、鑑賞を決意した次第です。

うん、まおも(まぁまぁ面白い:©Marikuriさん)でした。
まぁまぁ、そこそこ、よく出来ていると思います。

良かったところ。
「お葬式の場でお清めとして出された手料理を通して、主人公たちが亡くなった父親の考えを少しずつ知っていき、失われた"家族の絆"を再構築させていく」というコンセプトそのものは、とても面白いと感じました。回想を織り交ぜながらのエピソードの掘り起こし方も非常に丁寧で、よく出来ていると思います。それと特に、回想シーケンスでの役者陣の演技が、子供たちも含めて素晴らしく、映画全体の強度を高める効果があったのではないでしょうか。

ただ…

物語の構造上致し方がないことなのですが、主人公たちに"真相"が明かされるタイミングが、あまりに遅すぎるのではないだろうかと思ってしまいます。自分が主人公の立場だったら、もっと早くに教えてくれよとキレていたと思うんですよね…
しかもそこで明かされた内容も完璧なものではなく「どうして"彼"が去らなければならなかったのか」については、類推するしかないような構造になってしまっているというのも頂けないです。"彼"は、この家族にとってはワイルドカードの様な存在なのですから、「見えない、わからない」ということを物語のフックにするのであれば、もっと"彼"自身の考え方や決断に強くフォーカスを当てても良かったのではないでしょうか。
加えて、斉藤由貴さん演じる母親が、主人公たちに思わせぶりな態度をチラチラと取りながら"真相"を隠した状態で料理を振舞うので、観ているこちらとしては、隠し事を使って試されているような気持ちになってしまいます。主人公たち(と観客である我々)をのけ者にして、彼らだけで好き勝手をやっているようにも見えてしまうのです。ひいては、親が子供たちに自分たちのワガママを押し付けている様にも見えてしまいます。そうではなく、だったら全員「知っている」状態で話を展開させるという形にした方がよかったのではないだろうかと思うのですけど、どうなのでしょうかねぇ…

それと、地味に辛かったのが音楽でした。以前に鑑賞した「追憶」程ではなかったものの、場面場面でそれなりの音量と迫力でかき鳴らし続けていくので、ちょっと過剰に感じてしまいました。芸達者な演者が集まっているのに、非常に勿体ないです。あとは、台風が近づいているのに犬をしまわないだとか、ロケ地が長野なのに、登場人物が喋っている言葉が西日本の方言だったりだとか、冒頭の不味いラーメンがその後の展開に何も響いていなかったり…などなど、細かなところがそんなに上手くなくて、残念でした。

※※

とはいえ、芸達者な演者が集結し、打点の高い演技を披露しているので、見応えはある作品だと思います。「スカーレット」で戸田恵梨香さんの持ち味を知った方にもお勧めできますし、個人的には回想シーンのシュン役を演じた楽駆さんがいいなと思いました。もちろん染谷将太さんや浅野忠信さん、窪塚洋介さんが素晴らしいのは言うまでも無く。
興味がある方はぜひ。
せーじ

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