トランプ政権下にあったアメリカで公開されたらそりゃ荒れるよな、ってぐらい過激で恐れ知らずの態度に痺れる。
非常にシニカルかつラディカルな問題作である一方で、ブラムハウスらしいバイオレンスポップなノリもキマッた痛快なエンターテインメント。
90分というタイトな構成で緩急つけずに一気に駆け抜けるのも作風としては申し分ない。
リベラル vs ホワイトトラッシュという構造の中で人間狩りが繰り広げられるわけだけど、どちらかに肩入れすることもなく、全方位的に皮肉たっぷりに茶化して死体を悪ノリで積み上げていく。
なので社会風刺的な色合いを宿しているものの深刻な顔つきにはなっておらず、あくまでも露悪的でキャッチーなジャンル映画になっているのである。
とは言いつつも、フェイクニュースやそれを拡散させるSNSなど、不透明な情報に塗れた社会の闇を色濃く投影したストーリーは極めて現代的でシリアスだ。
紛れもないフィクションである一方で、各地で分断が進む昨今において寓話だと吐き捨てられるほど世界は優しくない。
娯楽映画のセオリーを逸脱したショッキングなシーンがいきなり飛び出して驚愕したら最後、怒涛の展開でひたすら圧倒させられる。
威勢の良いゴア描写の雨霰なのだけど、素っ頓狂で浮世離れしたそれはどこかユーモアすら漂っており、目を覆いたくなる惨劇なのに不思議と笑えるという奇妙なムードが充満しているのが特徴的だ。
主人公の虚な表情と圧倒的無双ぶりはどこかリーアム・ニーソンを彷彿とさせるものがあり、新たな人間兵器の誕生の瞬間に立ち会った気分になる。
とにかくその人物の佇まいが魅力的で、単純にバイオレンスアクションとしても楽しめる作りになっているのもとても良かった。
好き嫌いははっきり分かれるキッチュな映画であることは間違いないけれど、刺激が欲しい気分にはピッタリの快作だと思います。