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ソー:ラブ&サンダーのAnima48のレビュー・感想・評価

ソー:ラブ&サンダー(2022年製作の映画)
3.8
大人になってから一年がたつのが速くなっていくような気がする。幼い時は遊園地から帰る車中の3時間は永遠のようだったのに、今じゃ早めに抜け出せれた飲み会くらいの長さで体感時間ってやつかな?子供時代に比べて目新しいことも少なくなったし。

何千年も神様やってるといろんなことがありすぎて、大抵のことは気にもせずにどんどん過ぎ去っていくのかもしれない。自分の星や民族がほぼ絶滅してしまっても仲間の神様が殺されてしまっても、それってよくあること。特にMCUでは。そういえば最近この世の半分の人達いなくなってたよね。だから自分を崇める男が苦難のどん底に居ても気にしないんだ、助けを求めても放っておくし、そんな蟻よりも些細な事はことはどうでもいい。・・いや、どうでもよくない!一握りの勝手な存在の気まぐれに罪のない人達が振り回され潰されるなんて我慢ができない。男がゴアになる過程にしっかり感情移入ができた。一見とても無邪気なストーリーに、彼は見放された怒りと行き場のない悲しみそして奇妙な崇高さを加えてくれる。(ただ暴力は避けてほしいけれど、それじゃ映画ならないよね。)

でも、小さな願いや想いにもしっかり応える男や神はちゃんといてソーはそんな人だ、特に自分の想いには。それでソーはジェーンのことが忘れられないし、未だ自分探しの旅に出てる。ぽっちゃりソーが少なくとも体形を取り戻してあっけらかんとトラブルに対応していく、ヴァルキリーをはじめアスガルドの人たちも故郷全滅したけど楽しくやっている。これってアスガルド人の気質なんだろうか?ムジョルニア・ソー・ストームブレーカー・ジェーンの間で表現される嫉妬や遺された恋心が楽しくって、ソーは対人よりも対道具の方が感情の綾を理解できて素直に謝ることができる。でもジェーンのことになると、素直に切り出せない。

ジェーンが素敵でカラフルなソーの物語がより一層色鮮やかになって、そして儚い。女性のヒーローにはワンダーウーマン、ワンダ、キャプテンマーベル等がいるけれど、ジェーンの筋肉美が本当に素敵だった。纏わる諸々の事(ムルジョルニアでソーになることで強靭な肉体を手に入れ癌と戦うけれどそれは活力を使い果たしヒーローも病には勝てない、反面戦闘時には異様にやる気がみなぎるのは不安の裏返しなんだろうか?)は人生の無情や新たに得る力の代償について教えてくれる。それはゴアについても同じこと。2人とも行き着く先で形は違うけれど愛を選ぶし、ソーもそれに応える。

今回は子供に関わるシーンが多く、発端から始まり、浚われ救出する対象も子供達。…子供を終盤巻き込んでしまったのは意外。でもヒーローと一緒に戦うのは子供なら大抵は夢見るシーンなので、どう受け取ったら良いのだろう。

ゼウスの件はひたすらに笑わせてくれて、身勝手なセレブが庶民にはわからない理屈を並べ立てる感じが出てるし、期待を裏切られたソーへの仕打ちがファン軽視のスターのようにも見える。

DCは肉親の過去(特に親からの因縁)に捕らわれることが多くてそれが自身の価値観や正義・主義に大きく影を落とす、そしてそれに悩み争うという悲痛さが付きまとう。MCUはどちらかというと横のつながり、例えば恋愛とか自分の発言・行動とか生きていく中でのアクションや子や次の世代に何を残すかということで悩むことが多いような気がする、でもあっけらかんとしている。色々あるけどがんばっていこー!みたいな。大抵のヒーローが自分の中にある闇や至らなさと戦うという罠に嵌まっていてソーも同じルートにはまり込む。けれど無邪気さが功を奏して深みにはまらない。同じ悩みでもそれは同じ悩みでも悲劇というよりはほろ苦さというテイスト、飲み屋で楽しそうに飲んでいたおじさんがふとこぼすような人生の普遍的な問いのような気がする。

ハードロック、今回はGuns N' RosesのSweet Child O’ MineやWelcome To The Jungle等が喜ばせてくれる。初めて彼らの曲を聞いたとき、遠い将来で将来彼らの曲が2匹のヤギが耳障りなうめき声をあげながら雷神を船に乗せてゴージャスなゼウスの宮殿に引っ張っていくなんていうシーンに流れるとは思わなかったので驚くやら楽しいやら。前回Led Zepplinで、アイアンマンの時はAC/DCだったのでマーベルとハードロックの相性ってすごく良いのかもしれない。特にエンドロールはCDショップでジャケットを漁っているようなそんな感覚があった。

ガーディアンオブギャラクシーの一行が元気だったのがまるで親戚の変わりない姿を目にできたように嬉しい。毎度のことになるけれど、MCUは他の作品を知ってた方が楽しいし、中には見てないと筋が追いにくいこともある。けれど今回は大丈夫。子供達にお伽話のように語られるソーの過去、中には今まで語られなかったソーとジェーンのいきさつも教えてくれる、なので正直これ一本見るだけでも大丈夫のような気がする。マーベルがそんな楽しみ方も残してくれたようで少し嬉しかった。

・・ソーって、結構料理上手なんだね、子供好きそうだし、良かった。
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