さうすぽー

シン・ウルトラマンのさうすぽーのネタバレレビュー・内容・結末

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

自己満足点 83点

はい、大好きです!!
色々と前作のシン・ゴジラに劣ってる部分もあるとは思いますが、それでも自分はシン・ゴジラ以上に感動しました!

シン・ゴジラを製作した庵野秀明率いる製作陣が、今回はウルトラマンを似た作風で映像化した本作。

今回は前作シン・ゴジラで総監督を務めた庵野秀明が製作プロデューサーに専念し、樋口真嗣が単独で監督を務めている...と思ってたのですが、スタッフクレジットを見ると予想以上に庵野秀明の名前があり、「結局いつもみたく色々やってんじゃん!笑」と突っ込みたくもなりました(笑)


まず、特撮シーンの怪獣について。

様々な怪獣が(今作では禍威獣と表記)出てきますが、特報の段階で出てきたネロンガやガボラだけでなく、ウルトラマンが登場する以前から怪獣が出ていたという設定で色々な怪獣が出てきます。
冒頭で猛スピード展開で映し出されてましたが、冒頭の怪獣は何と「ウルトラQ」の怪獣だそうです!
ウルトラQを一切観たことがなかったので知らなかったのですが、当時の放送ではウルトラマンの前にウルトラQが放送され、人間が怪獣を倒す話をやっていたのは聞いていました。
そして、ウルトラマンが登場してからネロンガというウルトラマンの怪獣になる所が、当時の特撮ファンを唸らせる演出になっていて「上手いなぁ」と感心させられます。

ちなみにCGでのバトルシーンは多いものの、CG自体は良くはないです。
ですが、それを無視出来るほどの造形のオリジナリティがあってあまり気になりませんでした。

今回のネロンガやガボラ、ザボラ、そしてメフィラスの造形に関してはオリジナルに準じてはいるものの、どこかエヴァンゲリオンの使徒のようなデザインにも近いなど、どこか庵野秀明らしさが出ている気がします。特にザボラとメフィラスに関してはそれが顕著に感じられました。
そこがオリジナリティがあって格好良かったですし、「特撮っていいな!」と思わせてくれます。

そして、最後のゼットンが出てきた時は圧巻で、出てきた時の絶望感が半端無いです!(笑)
だいぶエヴァの使徒っぽいデザインなのでオリジナルのゼットンの姿からはだいぶかけ離れてますが、一撃で地球を滅ぼす力を持つという設定に負けてないくらいの迫力でした。


演技に関しては正直シン・ゴジラの方が演技上手い人が多かったです。
ただ、ウルトラマンに変身する神永新二を演じた斎藤工は非常に良かったです!
命を落とした後にウルトラマンと同化して以降、どこか人間味の無い所と正義感のある人物を見事に演じていて、もしかくると彼はどこか人間味の無い役が似合うのかもしれないです(笑)

また、メフィラスを演じた山本耕史は個人的に今回のMVPです!
社交性がありながら人間味を感じさせず、どこか人間を見下してる様が非常に上手かったです。

あと禍特対のメンバーである有岡大貴。
今まではHey!Say!JUMPのメンバーとしてのイメージしか無く、演技は殆ど観たことが無かったです。
台詞回しに関しては少し拙くて英語も上手くは無いのですが、クヨクヨしていて少し気の弱い役として非常に似合っていた気がします。


また、ストーリーとしてはウルトラマンの設定がよく生かされていると思います。
原作のウルトラマンの設定は、光の星から地球に来たウルトラマンが、死亡したハヤタ隊員(今作では神永)と同化することで人間の姿となる設定です。

今作のウルトラマンは地球にやって来た時の衝撃波で、子供を庇った神永の人間性を理解するために同化し、「人間」という生き物に興味を抱く設定。
つまりは、人間と交流する知的生命体が人間を知り、地球をどうするかという話であり、そのザボラやメフィラス達、そしてゾフィー(!)と対立しながら地球や人類を守るために戦う話です。

なので、ウルトラマンという名の地球外生命体から見つめる人間の本質等を描いており、人の弱さや強さ、内面や哲学等を描いていたのが非常に興味深いです。

本作のキャッチコピーの一つになった「そんなに人間が好きになったのか、ウルトラマン」という台詞はゾフィーが終盤で言いましたが、今ではその言葉に重みを感じるし感動もしました。

また、ウルトラマンという巨大な生命体が怪獣と戦うと神のように扱いますが、斎藤工演じる神永(ウルトラマン)自らが「自分は神ではない」と言い、人間に協力を協力を求めて戦いに挑む様は前作のシン・ゴジラを彷彿とさせる展開で胸が熱かったです。


ただやはり今作もシン・ゴジラと同様に賛否が分かれる内容となっております。
正直自分も胸熱で感動する後半に比べたら前半はそこまで熱いものでも無かったです。

主な理由としては、台詞回しがアニメっぽい所です。
これは庵野秀明がアニメーション監督だからという単純な理由ですが、禍特対のメンバー同士が会話してる時はアニメっぽい少し大袈裟な台詞や演技だったので前半は違和感がありました。

また、話自体がTVシリーズの総集編のようでダイジェスト感があるという意見がありますが、わからなくもないです。
個人的には描きたいテーマが一貫してるので違和感はありませんが、総集編ぽく見えてしまった一番の原因は悪役が複数いることだと思います。
アメコミ映画とかはヴィランが1人であったり複数いてもメインのヴィランがいることが圧倒的に多いです。
それに比べて今作は、ザボラやメフィラス等、メインの悪役が固定していたかったのは事実だと思います。


そして、劇中の長澤まさみに関する描写が「セクハラだ!」と言われてる件について。
個人的には、描写の意図が解るのでそこまで不快には感じませんでした。

神永演じる斎藤工が長澤まさみの匂いを嗅ぎ続ける場面に不快に感じる人が多いようですが、これはとあるTwitterユーザーの指摘を引用します。
庵野秀明はエヴァ破において、生命の身体的特徴に5感があると言っています。
触覚、視覚、痛覚、聴覚、そして嗅覚です。
そこの5感に直結する行動が人は変態的に感じてしまうとしています。
ですが、変態的=生命の特徴に合致するという指摘でした。
したがって、劇中のあの場面は宇宙生命体であるウルトラマンが、人間の特徴をつかむ(探る)ことでメフィラスの戦闘の作戦として使ったと言えるので、この描写は不快と感じる人がいても倫理的に反するものでは無いと言えるでしょう。

長澤まさみが巨大化して無表情で街を歩く場面は個人的に大爆笑でした(笑)
メフィラスの陰謀が原因ですが、それにしてもシュール過ぎます(笑)
アングルによって見えそうな場面があったとしても、「大怪獣のあとしまつ」の政治家が怪獣の傷に頭から落ちてパンツ丸見えになるシーンと比べれば全然増しな気がします。

ただ、尻を叩く場面とそのカットだけは個人的に違和感がありました。
長澤まさみが「気合い入れていくわよ!」と言いながら気合い入れるのは理解しますが、ここは普通に背中で良かった気がするし、わざわざ尻をドアップで映す必要もよく解らなかったです。


色々と好きだった所や評価が分かれる所、自分が好きじゃなかった所など、かなり語れる要素があります。
それは、それだけ内容が濃密だったという証であって、庵野秀明や樋口監督率いる製作陣が力を入れて、なおかつウルトラマンへの愛を込めて製作されたのが非常に伝わってきました。

微妙な所もありましたが、愛せる部分が多かったので今年の邦画ではベスト級に楽しむ事ができました!