伏見の剛力

1917 命をかけた伝令の伏見の剛力のレビュー・感想・評価

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)
4.0
個人的にアカデミー賞は視覚効果賞、編集賞、撮影賞この3つの賞に着目すると自分好みの作品に出会えるまたは出会っていたなんてことが多い気がします。

まあぶっちゃけ私はアメコミを嫌っているアカデミー賞会員とは馬が合いませんし作品賞受賞作品を心から満足したことはグラディエーターぐらいです。

ところがアメコミ嫌いの会員がNetflixも敵視している中、韓国賄賂でパラサイトを受賞させたのかと勘繰ってしまいましたがその事実がなくとももうどちらでもいいくらいパラサイトは素晴らしかったです。
多分映画に興味を持ち始めてから1番心から喜べる作品賞ではないでしょうか。
革命が起きましたね。

そんな歴史的快挙の中で編集賞は納得のフォードVSフェラーリで視覚効果賞と撮影賞2つを受賞したのが今年1月からハズレの少ない作品勢の波に乗りやってきた1917です。

ロジャーディーキンスのどこのシーンを切り取っても絵になる個展を開けそうな安定のカメラワークにサムメンデスという007スペクター以来のタッグとなるワンシーンワンカット話題性抜群の本作です。

ワンシーンワンカットですが人が映らなくなり背景や岩だけとか暗くなったりここでカットしてスタッフと談笑してんだろうなと何ヵ所かわかるくらいで予告編で2時間でこんなに暗くなるかね?冬の17時から19時までの話しか?6時から8時までか?と疑問に思いましたがそういうことでしたね。
まあ映画が全編ワンカット風である必要はないんですがこれを戦争映画に使ったことで緊張感がこれでもかというくらい時間をかけてジワジワ伝わってきました。

プライベートライアンやブラックホークダウンや13時間ベンガジなどもう見飽きてるのでこれらと同じことをやられては物足りません。
正直私は戦争映画で戦場で人が臓物はみ出してようが五体不満足だろうが砕け散ろうがあまり感情移入や緊張しませんなぜなら戦場でお互いが殺し合うのですからそりゃ血の雨は降るでしょう。
逆に私生活にいきなりナチが介入してきて兵士でない無防備な一般市民が頭撃ち抜かれるホロコーストは何時も緊張感があり感情移入してしまいます。

このような戦争映画のマンネリ化を打破しているワンカットがメガネいらずのシンプルな2Dで映画史上に残る映像体験を可能にしていることに驚きましたね。

ワンカットですから主人公達のドキュメンタリーのカメラマン視点なので塹壕の頭を下げての表記が映るだけで流れ弾の危険性を肌で感じたり無人かわからない建物を息を殺して調べる時や日本語字幕でたまにあるじゃないですか語尾に「…」が付くと何かが起こるんじゃないかと不安を感じたりとこれはもう私の嫌いなホラーですよ。

たまに一服しながら下ネタを言い合ってトランプゲームをしている兵隊の場面に変わってくれればそれはそれで落ち着くんですが長回し密着型なのでそうはいかず緊張の糸が切れることはありません。

IMAXで観ましたがもしレンタルとなるとここまで疲労感と満足感が押し寄せてくるのか疑問ですが間違いなく3Dや4Dなど最近ではジェミニマンのHFRのような映画館での新たなジャンルを確立したのではないでしょうか。

夜に照明弾が打ち上がり荒廃した町の建物の影と照明弾の光が織り成す007のオープニングにありそうなまたはファーストマンの月面着陸のような白黒の神々しい世界の中で逃げ惑う主人公、このシーンを戦争映画にも関わらずもっと!もっとちょうだい!と欲しがってしまいました。
僅差でフォードVSフェラーリよりもIMAXで観る価値がある体験型戦争映画だと思いますが1つだけ文句を言わせていただくと予告編がマリアンヌばりに下手くそです。
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