ぐりんでる

1917 命をかけた伝令のぐりんでるのレビュー・感想・評価

1917 命をかけた伝令(2019年製作の映画)
4.5
全編ワンカット🎥

実際にはいくつかに分けているらしいけど、暗転ポイント以外わいの目は余裕でごまかされた。
POVではないけど、まるで、伝令を受け同行する3人目のような臨場感は凄まじい。

野原で寝てるとこ叩き起こされ、古靴の味のする少しのパンをほんの一口ずつかじるという食べ物もままならない状況で、上官から言い渡される司令は、別拠点の部隊への攻撃停止命令。1600人の命を救うための伝令

塹壕、ノーマンズフィールド、ダンジョンのような敵陣とあらゆるステージごとに訪れるイベントを乗り越えていくのは、ワンカットも相まってまるでゲーム的な要素がありながらヒリヒリとした緊張感に身を委ねてこの伝令を見届けることになる😬

しかし、軽い気持ちで戦争の一端に触れようとした平和ボケのわいには、一瞬の安らぎも与えられることもなかった…

泥でぬかるんだ地面、土埃、腐乱死体、群がるネズミや虫、生きた心地のしない人間の表情、どこから来るかもわからない銃弾への恐怖。見ているうちに、というか序盤から過酷な戦場の疑似体験をすることになった。

しかし、いくら臨場感がすごかろうと、緊張のあまり握りしめいた俺の拳は泥にまみれていない。綺麗なもんだ…



今ではメール一本で済んでしまうことのような伝令通達というシンプルな任務ではあるけれど、この上なく過酷な任務になることことは見る前からわかっていたし、実際、その通りの映画だった。
でも見る前と見終わった後では、随分気持ちが変わった😬


始終生と死の狭間の極限状態の中で、兄弟や家族への思い、母親もわからない赤ん坊、故郷を思う歌。そんな小さくもとても強い灯火のようなものが描かれる場面もとても印象的だった。

しかし、それも暖かいものではあるけれど安らぎの場面というわけではなくて、むしろ、そういう場面で自分はなんていい環境、時代に生きているんだと胸が締め付けられる思いであった。


そうしてあらゆる状況を駆け抜け、体も心もどれほど疲弊しても、その使命と思いを遂げるためにとにかく目的地を目指す。

ついに目的の部隊に遭遇するも塹壕の遠くにいる目当ての司令官マッケンジー大佐。

目的を前にし意を決した最後の疾走。
敵陣に駆け込む味方兵の波を横切るスコフィールド。その一直線の足跡は胸に抱えている伝令に従えば兵士たちは越えていかなくていい線。救える命かもしれない。

しかし、兵たちは知らない。
だからスコフィールドは早く届けなくてはならない、その一歩一歩の踏み込みで縮まる距離がまるで救える命を増やしていけるような、まさに命をかけた走り

それを感じているから、もうとうに限界突破した体で命をかけて死線を突っ切る。そんな風にも感じた。
いや、見ている最中はそんなこと考える余裕すらなかった

とにかく110分を駆け抜けていった。


あぁ…


感想:Drストレンジの放った言葉に、これは巨大な地獄の一瞬の束の間の休息にすぎないと戦争の非情さを植え付けられる。

でもこれは俯瞰的に戦争が良くないと考えさせられたり、また戦争の英雄の苦悩を描き虚しさを語る映画でもなく、もちろん戦争の悲惨さ無意味さも十二分に伝わった上で、戦争体験談を直接聞いているような感覚に近かったよ。幸せを噛み締めると同時に、律されるような気分。

過酷な状況で懸命に任務を果たそうするその思い。あんな状況でも自分の食料を丸ごと渡す行動であったり、とにかくあの時代の一瞬にタイムスリップし、彼らの一瞬の生き様を見させて頂いた🙇‍♂️


1917、今から約100年も前、どんな場所でも彼らのように、誰かを思い走り続けた人たちのおかげで、命は繋がり、新しい命が生まれて自分が生きているのだと思うと涙が出てきた。
もはや今これを書きながら走る姿を思い出して泣いているのである。


平和ボケなどと言ったけれど、それは悪いことじゃない。でも恵まれた時間を無駄にすることはよくない。
彼らには迷い悩む隙すらも与えられなかった。悩めることも幸せなのかもしれない。

だから平穏な日常でも何かのために、大いに悩み考えることを噛み締めて、決めたならばその道を一生懸命生きなければならないと。激しく胸打たれた映画体験となった。


待ち合わせ時間ギリギリになった時、あきらめるのではなく、まずは走ろう。
小さなところからでもだらしない自分を律しよう。そう思うことができたのだ😔