ぐりんでる

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのぐりんでるのレビュー・感想・評価

5.0
~~
土地を追われ行き着いた地で石油を掘り当て莫大な富を築き上げたオセージ族の元には金に目の眩んだ白人たちが群がっていた。戦争帰りでその地へやってくるアーネストは、叔父で町の権力者”キング”ヘイルに導かれある計画へ加担していく。
~~
差別によって成立した連続殺人というショックな内容だが物語の起伏は結構平坦。ロバーロが悪いこと企み、実行するレオプリオがつい余計なことをしては怒られてお尻ぺんぺんされる。妻はそんなレオプリオに呆れるも愛しい眼差しを向け更生を願う…という重厚かつ軽薄な人間ドラマその密度の高さに始終釘付け。

主人公アーネストの思慮深気な面、語りで物語は始まるも舞台の街へ到着すると、いきなり軽率なノリをみせてくれるので早々にアホ確定なアーネスト。
以降、顔はプリティだけど、おつむがちょっとアレよね彼。という評価が一貫する残念な男アーネスト。

レオプリオって軽薄な役が板についてるなぁ。愛嬌というかなんというか毒っ気を中和させる人間味を出す才能の塊じゃん。そして、その素質こそアーネストのキャラ造形にはぴたりとハマってた。

すごいと思われたい。実際すごいんだぞオイラ。とガキの虚栄心みたいな稚拙さがレオプリオのプリティな顔に映えまくる。
とくに面白かったのは絶対事態を分かってないし1億万%何にも考えてないのに、しっかり受け止めて真剣に考えてるフリするツラ。だんだん笑えてきてしまった…実際は笑えないようなことしてるクズなんだが、何だあの見事なへの字口はww🤣😡

とはいえ性悪なわけではなく、愛や善性が欠片もないわけじゃない。それが今作の重要な部分でもあり、お前ここでどう答えるかだぞ?って大事な局面でその表情が真価を発揮する。

そして”キング”ことヘイル。こっちは人の心無さそう。悪行も慣れすぎてもはや作業感。時折瞬間的に善意を注いでるような面も見せるし、それが偽善というわけでなく慈愛に満ちていそうだから始末が悪い。

表では信頼も熱い好好爺、裏では全てを掌握し犯罪を操る黒幕。一見パルパティーン的な巨悪の立ち位置で振る舞ってるが、自分のことをキングとお呼び!と自分で言っちゃう。こいつもアーネスト同様、登場早々に小物なその人間性をご親切に教えてくれた

実際、お粗末な犯罪計画の繰り返しでイレギュラーな事態に対しても一本調子なもんだからかなり滑稽。そんな大物気取りな小物感と、事実大物な立ち振る舞いや紛い物でも温情をかけるある種の厚み、それを上手く共生させた不気味さが伝わってくるロバーロの説得力はさすがにさすがで見事に怖いじじいだった。

そんな演技お化けな役者に挟まれ、かつ物語上でも追い込まれる立場にいるアーネストの妻モーリー。この人の凛とした佇まい、澄んだ瞳から感じる神秘性すら帯びたような聡い眼差し。上記のクズどもに引けをとらない存在感。今作の重厚さは基本的にこのモーリーの存在によるものが大きかった

映画はある時点から不思議な切り替わり方をする。これまでの物語は突然終わり後日談を語るあの人。
ヘイルは諸悪の根源だが、手に追えない巨悪なわけじゃない。「オセージ族の命は犬より軽い」という風潮、それを良しとし成立している社会、歴史の陰にそれとなく隠す態度が悪で、自らが登壇し語ることでより強い憤りやメッセージを感じた。またエンドロールが、静かに重い余韻を残してくれた。この静寂でこそ映える音。映画館で観てよかった



🦜🦜🦜🦜🦜🦜🦜🪶🪶🪶📚🏹


その瞬間瞬間に存在する大きなモノにただただ流され、調子良くその場その場をやり過ごし色々目を背け、欲にだけは忠実に安易で容易な選択を積み重ねる愚かなるアーネスト。

ろくでもないクズだったなぁアーネスト。最低な男だわ。
と観終わってぷらぷら歩きながら映画の内容を思い返していると、そういや俺もよくやるな。なにも考えてないけど考えてるフリ…からはじまりだんだんあいつって俺じゃね…?となり、すんっと嫌なとこに着地しこの冬一番にバツが悪くなった。

でも、ということはボクちんってレオプリオ?😳
そんなんで今作もまた自分にとってはマスコッシ監督による”君たちはどう生きるか”映画となったのだった…ひんっ!😖

なお、自分のアイコンの絵の真ん中の人物はレオプリオをモチーフに描いたもの。そのくらいわりと好きな俳優の一人。
そんなレオプリオの「ウルフオブウォールストリート」以来の素晴らしいクズ演技を見れたので大満足印