ぼのご

異端の鳥のぼのごのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
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初っ端からえげつない出来事が映し出されて、それだけでもトラウマ物なのに、それも受難の始まりに過ぎないっていう衝撃。モノクロの映像の美しさと寓話的な雰囲気のお陰でなんとか目を逸らさずに、というか釘付けになって観たけど、とにかく地獄の連続だった。

ペンキで色を塗られた鳥が群れの中に戻った途端、あっという間に仲間たちにいじめられて死ぬ場面は象徴的。自分たちと違う物を差別して迫害するのって本能によるものなのだろうか。やるせない。動物たちも残酷だけど、人間はそこから更に拗らせているからより一層醜悪。

手を差し伸べてくれる人も中にはいて、一応は救いにもなっているけど、その人たちはその人たちで世間一般からはぐれている感じが否めない。だから、ただ単純に優しさから少年の手助けをしているというよりは、異端同士の支え合いのようにも見える。それは何よりも神聖な行為のように感じたけどやっぱり限界はあって、別れの際は一様に悲しかった。

作品が進むごとに少年もたくましくなっていく。でもそれってこういう世界じゃなかったら必要なかった筈のたくましさなわけで、少年の表情から無垢さが消えて言葉も失っていく様子は観ていてつらかった。
作品は美しいけど、世界はどうしようもなく醜いと思ってしまう。
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