Growltiger

異端の鳥のGrowltigerのレビュー・感想・評価

異端の鳥(2019年製作の映画)
2.9
第二次世界大戦中、ナチスから逃れ東欧の田舎に1人疎開した少年。しかし疎開先の叔母が死に、行くあても無く、少年の辛い旅が始まる。

“ヴェネツィア映画祭で退場者続出。だがラストを見届けた者はその映画に10分間のスタンディングオベーションを捧げた”
↑という予告に惹かれ、怖い者見たさもあり映画館へ。

まず観終わった率直な感想。
疲れた...。169分も必要だろうか?
退場というか、自宅だったら早送りしたかったかも。
少ない台詞の中、物語は淡々と進み、様々な人との出会いが少年を翻弄していく。

原題の「The Painted Bird」は異なる色を塗られた鳥(異端の鳥)は群れに帰っても仲間から攻撃されてしまう事を意味し、それは人間も同じこと。
この映画のタイトルはこれしか無いんじゃないかと思うほどはまったタイトルですね。
日本も協調性を重んじるあまり“出る杭は打たれる”で、いじめ問題は絶えないため「異端の鳥」というタイトルは響くものがありました。

しかし、映画の内容に関しては長さに加え、そこまで訴えかけるものが無くて残念。
「フィクションだから」という頭で見たせいもあるかも知れません。


※以下、ネタバレは避けますが、少し内容に触れます。

元々原作は作者イェジー・コシンスキがポーランドで子供の頃に体験した自伝と言われていたそうですが、後にフィクションと本人も認め、ポーランドでは発禁になった本だそうです。
そりゃこれだけ悲惨な出来事が真実のように伝えられたらポーランド人怒るわな....。
映画では舞台はポーランドでは無く、“東欧のどこか”と濁しています。

とにかく少年の身に起こる出来事は非常に辛い事ばかり。
身体的暴行は勿論
・動物の惨殺
・性的暴行
・ある人物の自殺
・ユダヤ人虐殺
など辛い場面多数。

しかし映像自体はあまり映らないよう撮られており、それほど映像的な強烈さはありません(R-18ではなく、R-15指定なのはそのおかげ?)。
悲惨な場面だけど泣き声、悲鳴だけって場面が多いです。
別に見たい訳でも無いけど、そればかりだとなんだかなぁ...。
ノンフィクションならともかく、フィクションである事を前提として見ているせいか「ショッキングな内容の詰め合わせ映画だけど映像は抑えてます」という中途半端な印象でした。

少年の行動にも不明点が多く、使用人の男に◯◯を返してあげるシーンとかはちょっとよく分からなかった(それずっと持ってたの...?)。

戦時中で人々に心の余裕が無かったにせよ、少年の出会う人達がヤバい人ばかりで映画を盛り上げる過剰演出に感じてしまったため感情移入しにくかったですね。

「出会う人のほとんどがヤバい人で、辛い目に合う主人公」という構図から、途中ふと昔のドラマ『家なき子』を思い出しました(汗)