晴れない空の降らない雨

羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

3.8
 ちょっと期待しすぎたものの、小規模なスタジオがつくった作品としてはかなりのクオリティだ。そして自分が今年観てきたほかの海外アニメーションと違うのは、めちゃくちゃ「和製アニメ」に近いこと。「師弟関係を結んで子ども主人公が成長するバトルもの」というジャンプの王道ストーリーを基本的になぞっていて、属性がどうのとかいう設定もジャンプ的だ。ただ、属性設定は五行に則っているし、自然界の描写も中華的な雄大なスケールを感じさせ、この辺りは本場の文化力発揮といったところ。
 ルックも和製アニメに相当寄せている。文明vs自然のテーマ設定・背景・BGMはぶっちゃけ劣化ジブリという趣があるが、『NARUTO』やボンズの諸作品の影響をもろに受けたとおぼしきアニメーションは本物である。カメラワークによるスピード感の演出、絵が抽象化する背動、攻撃を派手に飾る破片など。ラストバトルの都市破壊は『AKIRA』か? など否応なくいろいろ連想がふくらむ。とはいえ、天才アニメーターの個人芸になりがちな和製アニメのアクションと違って、全体の統一感は図られており、良くも悪くも大人しい。
 正直、日本人としては、これなら別に粗製濫造とはいえ和製アニメの良質なものを拾えばよい話であって、あえてこれを観る理由はないなぁと思った。確かに自家薬籠にはしているけど、意匠の中華っぽさ以外にオリジナリティをあまり感じない。
 あと作品とは関係ないけど、字幕は誰も校正しなかったのか? いちおう修正後らしいが、ルビが偏っていたり対等の相手に「はい」と返事したり、結構気になった。

※追記:2020年に大々的に上映するにあたり、5秒で考えたような副題が付け加わっていて笑う。