馬井太郎

ジャンゴ 繋がれざる者の馬井太郎のレビュー・感想・評価

ジャンゴ 繋がれざる者(2012年製作の映画)
4.5
一週間ほど前に、日本の古い時代劇モノクロ映画を、テレビでやっていたのを観た。一対一の決闘シーンで斬られた浪人、やや間をおいて頭から血を流し、地面に、顔を下にして、ばったりと倒れる。このとき、刀を握っていた右手と空(から)の左手を、微妙なタイミングで先に地面について、クッションにしていたのを、見逃さなかった。
この「ジャンゴ・・・」では、日本刀が銃弾にかわって、胸を射抜かれた大男は、ドスンと地面に倒れ込む。先の浪人侍と同じ、顔を下にしている。両手をダランと下げたまま、胸から、まるで丸太棒のように地面に倒れた。腕や手をクッション代わりにはしていなかった。
実際に銃弾を受けて死んだ人間を見たことはないが、おそらく、こんなふうに倒れるだろう、となんとなく想像はできる。
映画は、あくまで作り物、作る者は出来る限り本物に似せ、観る者は、そうとはわかっていながら、その世界にどっぷり浸かる快感に酔いしれる。
銃の乱射、ダイナマイトの爆発、等々、映画の良さをあらためて実感する刹那である。

奴隷解放を前にした西部劇、ワイオミングか? 何処かわからなかったが、雪山と積雪ロケが、新鮮である。ジェイミー・フォックスの、ここでの銃試射練が、伏線として生きてくる。
ディカプリオの悪役ぶりも、いい。フォックスの単発的セリフと対をなして、この膨大な長ゼリに拍手を送る。
「イングロリアス・バスターズ」から3年後、再びタランティーノからお声かかったクリストフ・ヴァルツ、髭が邪魔して、あの、しゃくれ顔、表情が隠されてしまったのが、心残りではある。
あとひとり、サミュエル・L・ジャクソン、注目すべし。
監督・タランティーノがほんのちょい、出てくる、というが、私は、気が付かなかった。