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雨月物語のkoyamaxのレビュー・感想・評価

雨月物語(1953年製作の映画)
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上田秋成による怪異小説を原作とした話。
その映画化というより、
小説全体の主題を映画に換骨奪胎して今の話にまとめたという感じです。

目の前の大事なものを見過ごしたまま、身の丈に合わない生き方をしたそのツケ。そして普遍的な欲望に従ったその末路を描く。

若干教訓じみたものがありますが、
その代価があまりに大きく、そこまでのプロセスを振り返ったときに、感じるのはやはりこれはホラーだな。。と。

立身出世のために家庭を顧みない男。
家族のいうことを聞かずに、「今よりちょっとよくなる」ことを目指して旅立ちます。
「すべてはみんなで幸せになるために」はじめたことで動機は立派といえなくもない。悪人らしい悪人はいないのです。悪意もない。
それでも、

気づけばこの物語と同じ入口がすぐに自分たちのそばにも存在するということにもきづかされ、なお一層の恐怖感を抱かされます。

「自分はただ何かに心が囚われただけなんです。」
という言い訳もむなしく、代償は大きい。。

今目の前にある大事なものに向き合うことが重要ですね。。
いろいろ示唆に富んでいます。
とりあえず、身近な人の話は聞いといたほうが身のため。
気をつけたいところです笑

今回久々に観るにあたって、名作たらしめる特にビジュアル面の「伝説的な霧」の要素をなるべく掃って観てみたのですが、これは最近のことではないかというくらい、それぞれの人物の執念にリアリティをかんじました(^^;

原作は江戸時代のもの、さらにそのモチーフとなった話はもっと大昔。。
描かれることは本質的に昔から変わっていないんだと思います。
そして自分が何を恐れているのか気づかされますね。。

ちなみに原作のひとつ「蛇性の婬」はビジュアルイメージ含め、より直接的な恐怖を追求したテイストとなっています。これも恐い。
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