銀色のファクシミリ

映像研には手を出すな!の銀色のファクシミリのレビュー・感想・評価

映像研には手を出すな!(2020年製作の映画)
4.0
『#映像研には手を出すな!』(2020/日)
劇場にて。原作既読、アニメ版鑑賞済み。素晴らしい原作漫画を、アニメ化ならこうだと見事に仕上げたアニメ版に対し、実写化ならこうだとアニメ版の模倣にしなかった快作。原作から実写で活かせる要素を選択して世界を構築した演出と脚本の勝利だと思います。

あらすじなしで感想。ドラマ版で原作1巻のラストまで描いた物語のつづき、原作2巻のラストまで「ロボ研と文化祭」の物語。アバンタイトルが唐突に往年の名作映画のパロディ。ここでまとめて描いているのは「これまでの経緯」と「有象無象の部活動がある巨大学園」と「フィクションラインは高めですよ」の3点。

原作からですが、アニメーション制作の膨大な手間と時間についてシリアスな解説をしながらも作品完成に至るロジックは甘めで、「どうやって間にあったのだろう」と思う事がしばしば。なので実写ならなおさらどこかでフィクションラインを上げておく必要がある。

冒頭からいきなり名作映画のパロディをぶちこんで「あんまり真面目に観ないでね」とフィクションラインを引いた。同時に映像研のメンバーが自分たちが思い浮かべる「最強の世界」を可視化して、なおかつ動かしてしまう物語描写にも説得力を与えている。実写版オリジナルの優れた要素。

実写オリジナルと云えば、ストーリーにも若干のアレンジがあり後から振り返ると、ロボ研の依頼を金森氏が受け文化祭で披露するに至った理由付けの弱さを解消していると思いました。実写版での受注と文化祭までの経緯が「プランB」だったという改変のほうが納得できる。

部活動が乱立する巨大学園という設定を原作より拡大して狂騒ぶりを高め、作品全体のテイストをコメディよりにしつつ物語の展開と説得力にも利用する。さらにキャストの演技もコメディよりに統一されていて、とても良きでした。

主演の3人もハマっていて、まず水崎氏役の乃木坂46三期生・山下美月。人気読者モデルという設定に負けない「お見立て会で見た時に、もうルックスが完成していた」と一期生に評された彼女。原作&アニメのイメージどおりのキャラクターになっていたと思います。

そして浅草氏役の齋藤飛鳥。アニメでは伊藤沙莉さんがこれぞ浅草氏だという声をあてていましたが、その浅草氏とは別でかつこれも浅草氏だというキャラを演じれていたと思います。

アニメの浅草氏は、人前では口数少なくただ自分が考えた設定を話すときはしっかり堂々と説明する。この浅草氏に伊藤沙莉さんのハスキーボイスがはまっていた。

転じて齋藤飛鳥の浅草氏は人前では挙動不審、設定を説明するというよりアイデアが溢れて止まらないという感じで早口になる。よりコメディチックな浅草氏になっていたと思います。

そして「映像研の電撃三人娘」を成立させたのは、乃木坂46三期生・梅澤美波の存在だったと思います。金森氏は身長180㎝、この設定を守れて高校生役が務まる主演級の女優さんはなかなかいない。でも身長170cmの梅澤美波がいてくれて、かつ演技もこなせるので、乃木坂46で電撃三人娘を結成できた。

加えて、音響研の百目鬼氏の意外な一面であったり、実写ならではで実際に音響の効果を示せたりも良き。お話としては、ちゃんと2巻のラストのあのシーンで締められて良かったです。そしてあの名セリフによりふさわしいクライマックスになっていたと思います。感想オシマイ。

#2020年下半期映画ベスト・ベスト主演俳優
齋藤飛鳥/『映像研には手を出すな!』
映画の感想でも触れましたが、アニメ版で伊藤沙莉さが完璧な浅草氏を披露した後に、浅草氏の特徴を別の角度から「これも浅草氏だ」と体現。アイデアと設定が溢れ出て言葉が追いつかない、早口長セリフもお見事でした。