映画を劇場で観たい理由はいくらでもあって、わたしの場合は「でかくていい音」がその内訳を結構大きく占めてる自覚があるんですけど、丸ごと1本「音」にフォーカスできる機会なんてのはそうそう訪れないのでは…?とわくわくしながら耳に全神経を傾けておりました。すごく楽しかった。
黎明期から現代に至るまでの映画史をおさらいしつつ、名だたる監督たち&その右腕となった職人の談話を交えながら名作の名場面を振り返る構成は端的に言って贅沢そのもの。役者が発する台詞やストーリーを盛り上げる音楽のみならず、川のせせらぎや衣服のはためきといった効果音に至るまで、途方もない手数と膨大なトラックをまとめ上げる手腕はまさしくマエストロと呼ぶにふさわしい技術の結晶でした。特に、冨田勲の影響を大いに受けたという5.1chサラウンドの再現には目も耳も釘づけになってしまった。エンドロール直前、白抜き文字のみが記された真っ黒なスクリーンに様々なアンビエンスが重なるところで静かに肌が粟立ちました。今後映画を観る際により留意すべき新たな着眼点を与えてもらえたように思います。
雨の決闘シーンのエフェクトをカスタムメイドする職人さんも、巨大なコンソール卓を自在に操るミキサーさんも、めちゃくちゃ格好よかったな…!