ひこくろ

おちをつけなんせのひこくろのレビュー・感想・評価

おちをつけなんせ(2019年製作の映画)
2.5
演技だけじゃなくて、創作もしたいし、自分ならできると思ってしまった役者さんが、好き勝手に作った典型的な駄作だと思った。

美的センスはあるのだと思うけど、それはとりとめもなく脈絡もない話を圧倒するほどの力を持っていない。
だから、だらだらと本人だけが満足しているような映像が続いてしまう。
ストーリーはほぼ皆無なので、観ていて何かを追う楽しみもない。
それでいて、代わりになるような魅力も、残念ながらない。

致命的なのは言葉のセンスがとてもよろしくないところだ。
ある意味でとことん現実的な台詞は、芝居として見せるにはむしろ最悪に近い。
言うなれば、居酒屋で話されているようなやり取りを、わざわざ脚本にして読ませているようなものだ。
作劇から最も離れた台詞は、作品の中ではリアリティをもちようがない。
こんなの、相当に上手い役者でさえ、棒読みになってしまうようなものだろう。
役者にとっては厳しすぎる脚本だと思った。

撮りたいものがある、というのは素晴らしいことだ。
それを否定する気は全然ない。
ただ、それが作品として価値のあるものかどうかは、プロデューサーなりなんなりのその立場の人がちゃんと判断しなければいけないことだと思う。
そして、この作品には作る価値はあったとしても、人に見せる価値はなかったと僕は感じた。

と、いろいろ文句を言ってしまったけれど、それでもひとつの作品として作り上げたことだけは尊敬する。
一本の映画を撮り上げるってことは、それだけ大変なことだから。
でも、本音で言えば、役者として魅力のある人は、役者として勝負してほしい。
のんは、ほかの作り手の人によって役者として起用された時のほうが、圧倒的に素晴らしいのだから。
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