コンソメ

花束みたいな恋をしたのコンソメのレビュー・感想・評価

花束みたいな恋をした(2021年製作の映画)
3.5
公開当時あの坂元裕二の恋愛映画だと、私の周りでも話題になっていた本作。
なにか参考になればと鑑賞。
凡庸になりがちな、特になんの特徴もない男女の恋愛を飽きさせることなくまとめ、片手間に観ようと思ってもついつい見入ってしまうような魅力が画面にあった。
最後のファミレスのシーンでカップルに己らを重ね合わせるところで一気に離れてしまったが、それ以外はストレスフリーで観ることができた。
特に感情が動くわけでも、アンテナが振れることもなく、淡々と見ていられるけれど、見るのをやめようとは思わない。
告白シーンや盛装別れ話シーンの横位置カットなどなど、印象に残る画面もいくつもある。

「こんな時に聴ける音楽があればいいのに」
この世にたくさん音楽はあって、好きな歌い手も曲も数えきれないほどあるのに、ぴったりとその時の気分にハマる音楽は中々ないもので。
自分なんて代替可能で、取るに足らない存在で、アイデンティティなんて全然ないって絶望することも多いけれど、自分だけのものも確かにあるのだと、この言葉で勇気づけられる。

淡白だけれど確かに味がある、不思議な肌感覚の映画だ。

押井守に偶然会える確率ってどのくらいだろう。
ストリートビューに載る確率ってどのくらいだろう。
愛する人と出会い、また自分も愛してもらえる確率ってどのくらいだろう。

映画や本や演劇は血液で、それらが好きな人ってずっと好きで、根底には根付き続けるもんだと勝手に思い込んでいたから、麦くんの変わりようにはショックを受けた。
社会に揉まれるだけで、映画や本や演劇からあんなに離れてしまうものなのか。パズドラしかやる気が起きないって、そんな。
逆にそんな状態の人までも惹きつけてしまうパズドラの威力。その根源はなんぞや。
そういう人たちが世の中には大半であること、そこへコミットする作品を作り、一人でも多く劇場や映画館へ足を運ばせること。
日本のエンタメ業界復興までの道のりは中々厳しい。
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