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ダーティハリーのろのレビュー・感想・評価

ダーティハリー(1971年製作の映画)
5.0

「汚れ仕事ばかりだから“ダーティハリー”なのさ」

路肩に紺色のフォードのトラックが止まっている。
その隣を、ガムを噛みながら歩いてくる刑事ハリー・キャラハン。
曲がるとサンフランシスコの坂道がずっと続いて、明るい空とビルが作る影のコントラストが眩しい。
そのまま視線をすっと上に向けると、屋上から街を一望できる。
そこで見つけた次の犯行予告。「クソッ」と呟くキャラハンのアップから映画が動き出す・・・
台詞を一切入れない、この渋いオープニングがすでにかっこよくて、これは劇場で観たらたまらんだろうなとウットリ。(「アルカトラズからの脱出」のオープニングも好き)

警察署内にあるサンフランシスコの街の模型から、鐘が鳴る教会にジャンプ。
カメラは教会の前の芝生を走る少年と犬を追い、そこからスーッと斜め上の洗濯物にピントを合わせる。
バタバタとはためくTシャツの影から、ライフルを構えた金髪の男。
スコープ越しに覗く紫色の服を着た黒人、急行するヘリコプター、手を挙げろと呼びかける拡声器、驚いた犯人の青い目がぎょろりと動く。このスリル!

口喧嘩をする熟年夫婦、全裸で出迎える美女。
暗闇に紛れて双眼鏡を構えるキャラハンが、「裏窓」のジェームズ・スチュアートと重なる。
赤と青が行ったり来たり、‘イエスはお救い下さる’のネオン。
ぼうっと浮かび上がるレモンイエローのボストンバッグ。
追い詰められたキャラハンが巨大な石の十字架を見上げる、その迫りくるゴツゴツとした感触・・・

尾行をかいくぐるため、わざと自分の顔をボコボコにする犯人スコルピオ。
乗っ取ったスクールバスで人質の子どもたち7人と歌をうたう。
「おうちに帰りたいよ」と泣いて訴える男の子の顔を殴り、陽気で楽しい人生~♪と喚くスコルピオはまさに恐怖の‘ハイホー’(白雪姫と七人のこびと)。

高速道路の上を走る線路で犯人を待ち構えるキャラハン。
ここで「夕陽のガンマン」のテーマソングを、頭の中で勝手に流しました。



( ..)φ

ドン・シーゲル監督の作品は一見、地味な雰囲気なのに、実際はものすごく美しい。
行きつけのバーガーショップの隣にある映画館で掛かっているのは「Play Misty for Me」だし、流れるようなカメラワークはどれも素晴らしくて、いちいち「カーッ!」とか「クーッ!」とか「フーッ!」とか大興奮。何度も何度も巻き戻して観てしまいました。
監督の作品、一気見したくなっちゃうね。
来週もBSで「ダーティハリー2」があるみたいなので、ちょ~たのしみです。
ろ