すいか

ミッドナイトスワンのすいかのレビュー・感想・評価

ミッドナイトスワン(2020年製作の映画)
4.5
心をえぐられるような作品だった。
なんと表したらいいのか考えているうちに時間が経ってしまった。

田舎に住む親には女性として生きていることを隠して、大都会に紛れるように、慎ましやかに暮らすトランスジェンダー凪沙。
育児放棄され、子どもとは思えないような気怠げな、無気力な表情をした少女一果。

そんな2人が出会って一緒に暮らし、ただの同居人という関係性を越えて共に生きていくようになる。

バレエに出会い、才能を見出されて少しずつ表情が明るくなる一果。そんな一果をみて、いつの間にか凪沙は彼女を娘のように応援し支えるようになっていく。
一果も、初めて自分を正面から見て受け止めてくれた凪沙に心を開く。
2人の繋がりは、心を通わせるという単純な言葉では言い表せないくらい、温かくて深くて、脆くて儚くて、時折痛いくらいだった。

2人の生活を守ろうと決意した凪沙の行動は、見ていて苦しくて辛かった。しかし、覚悟を決めた女の、一本筋の通った気高さがとても美しかった。

観て少し時間が経ったけれど、私が一番に思い出す場面は、バレエ教室の先生に「頑張りましょう、お母さん」と声をかけられたシーンで見せた凪沙の表情だ。
本当に、嬉しかったんだなあ。胸が締め付けられる。
すいか

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