すいか

MINAMATAーミナマターのすいかのレビュー・感想・評価

MINAMATAーミナマター(2020年製作の映画)
4.3

「1枚の写真が世界を呼び覚ます」

かつて教科書にも掲載され、多くの人が目にしたことがあるであろう「入浴する智子と母」。この写真を撮影した写真家、ユージン・スミスが、なぜ水俣病の報道写真を撮影することになったのか、そしてどのように、水俣を撮ったのか。本作は、ユージン・スミスが水俣市に滞在した3年間で、彼とパートナーのアイリーンが目の当たりにした水俣病の現状と、チッソと闘う住民たちを描いた作品である。
史実に基づく物語であるため、当然脚色もされているし、大げさな部分もあるかとは思う。しかし、正直学校で教えられた内容以上のことを何も知らない私のような者にとっては、今なお苦しむ人がいる水俣病という大公害の凄まじさと、チッソに垂れ流しを認めさせ補償を勝ち取るために闘っている人々の思いが伝わる、素晴らしい作品であった。
生物濃縮って、そういえば習ったなとふと思った。始まりは微量の有毒物質(水俣の場合水銀)でも、有毒物質を食べたプランクトンを魚が食べ、その魚を食べた人間にはより高い濃度の有毒物質が溜まる。それが胎盤を通して胎児に移行することでより高濃度の有毒物質に暴露した子どもが生まれてくる…作中でチッソの社長が「たった数ppmだ」と話していたが、当時、生物濃縮のメカニズムはあまり知られていなかったのだろうか。

「入浴する智子と母」を含めた上村智子を写した写真は、遺族とアイリーンの意向により、1998年より長らく非公開となっていたそうだ。現在は京都に住われている、アイリーンは、この映画をみて、写真を公開(写真集への再掲)する意向を示したそうである。

ジョニーデップの役の作り込みが、すごい。ユージン・スミスにそっくりだ。LIFE編集長役のビル・ナイも存在感抜群だった。日本人キャストも良かったが、浅野忠信のオーラの消し具合が絶妙だったところ、MINAMIの美しさ、写真に興味を持つ少年役の子のはにかんだ様子がとてもかわいかったところが個人的には印象に残った。ユージンと智子が留守番するシーンも、あたたかかった。髭に触れた時、智子役の女の子がちょっと笑っているように見えた。きっと楽しい気持ちだったんだろう。

7本目。
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