「2時間39分は長えだろ…」と若干腰が引けつつ臨んだものの、あの手この手でテンポよく格好よく名曲の数々を繰り出して来る演出と若く美しくセクシーなオースティン・バトラーをひたすら愛でていられる構成により、スクリーンから片時も目が離せない娯楽作に仕上がってました。とは言え、数多あるエピソードの取捨選択には少しばかり首をひねらざるを得ない箇所もいくつか。
たとえば、わたしのようにリアルタイムで彼を観ていない世代でさえも何となく伝え聞いているエド・サリヴァン・ショーの逸話(上半身しか映さなかったとかいう、かの有名なエピソード)らしきものが見当たらなかったのはホスト役に適した俳優をキャスティングできなかったからかな?とか、大佐asトム・ハンクスが流石の奥行きある演技でもって「信頼できない語り手」的ポジションの狂言回しを担っているため次第に「…これって実質トム・ハンクス主演なのでは…?」という気がしてしまってくるだとか、終盤に晩年のご本人映像を惜しげもなく披露してくれちゃうもんでオースティンの熱演がやや説得力を欠いてしまう、ってか彼はこの扱いに納得してんの?大丈夫?って不安になってくるだとか、まあまあアレな点がありましたよね。特に「父親同然」とまで慕った大佐に不信感を抱くまでの経緯はもうちょい丁寧に描いたほうがスリラー感が増したんでないの?と思います。チラシでこんだけ煽るならなおさら。史実を紐解けば結末なんざ5秒で分かるのでネタバレもクソもないと思いますけど、本作におけるオチは「そりゃ後づけなら何とでも言えますよね〜」って感じでした。
それはそれとして、若かりし日のエルヴィスが覚醒する瞬間の眩しさったらなかったし、更に遡って少年時代の貧しく痩せこけた姿がまた忘れがたく印象的だったのですよね。後に花開く音楽性のルーツを辿る重要なシークエンス、もっとたっぷり時間を割いてくれてもよかった。演じたChaydon Jayさんは07年生まれの15歳とのこと、いずれきっと別の作品で世に出るはず。お名前、ちゃんと覚えておかなくては。