Mayo

tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!のMayoのレビュー・感想・評価

4.5
全編通して「リン=マニュエル・ミランダ天才」と思いながら見た。
もちろん前提としてジョナサン・ラーソンの才能と「チックチックブーン」というミュージカルの良さはありつつ。それをこんな風に映像化したことが、天才。

RENTがいかにジョナサンの人生から生み出されたものだったかが本当によくわかる。
留守電、雪のニューヨーク、仲間達との日々。
RENTにつながる描写が満載で、冒頭から涙が出そうになる。

アンドリュー・ガーフィールド、こんなに歌が上手かったのね。冒頭、ジョナサン・ラーソンの映像なのかと見間違うほどのそっくり。

ロビン・デ・ヘススは「ボーイズ・イン・ザ・バンド」での役が強烈だったからその印象が強くてなかなか成功したビジネスマンに見えなかったんだけど、リン=マニュエル作品の常連さんだからのキャスティングだったのかな。

ヴァネッサ・ハジェンズは主張の強めな女優さんと思ってたけど、今回(もちろんかなり目立つ役ではあるんだけど)佇まいがさりげなくて想像以上にいい味出してた。

RENTオリジナルキャストやHamiltonキャストのカメオ出演には大興奮したし、「POSE」のMJロドリゲスが出ていて嬉しかった。ピンク髪が似合いすぎててカッコ良い。

プールのラインが五線譜になっていくところや、ジョナサンの働くダイナーの壁が開くところなど、映像ならではの演出も楽しかった。

そしてスティーブン・ソンドハイムとのエピソードにも感動。ちょうど観ている期間中に訃報があったので、見届けたのかなとか色々勝手に想像してうるうるしていた。
スティーブン・ソンドハイムがいて、ジョナサン・ラーソンがいて、リン=マニュエル・ミランダがいるというこの流れが素晴らしすぎるし、ミュージカル界にこんな素晴らしい継承の形をもたらしてくれてありがとうございますと拝みたい気持ちです。

後半マイケルとのシーン以降、最後は号泣。画像のたたみかけがものすごい。
全体通して、ものすごく細かく映像が入れ替わるというか、一つのシーンの中にいろんな映像が重ねられる感じで、それがきちんと構成されているところがリン=マニュエル天才と思った主な理由なのかな。計算し尽くされてるんだけど感情に訴えかけてくる。

観るのに気合を入れすぎて、3日くらいかけて観てしまったので、通しでちゃんともう一度観よう。
あとRENTが観たくなった。久しぶりに観ようかな。クリスマスだし!


余談。
2015年の夏、「Hamilton」のオンブロードウェイでの公演が始まった月に、3階席の上の方の席に数万円払ったけど、観劇することができた。
当時、ニューヨークはHamilton一色。既にトニー賞大本命と言われていたし、劇場の中も「新しいミュージカルを作っているんだ!」というノリにのったオリジナルキャストと「新しいミュージカルを今目の前で観ている!」というラッキーな観客の熱気とでものすごい空気になっていた。
この体験と、ステージドアの前でリン=マニュエル・ミランダと撮ってもらった写真は本当に一生の宝物です。
あれからどんどん更にすごい人になっていっているけれど、きっとリン=マニュエルさんは今も自らiPhoneのシャッターを押してくれたあの時と同じように気さくで優しい人なんだろうな。
これから先どんな素敵な作品や音楽を生み出してくれるんだろう?とても楽しみです。


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2023. 1. 23 追記

通しで鑑賞。
30歳を目前に、いつまで夢を追いかけるのか?スティーブン・ソンドハイムは27歳でデビューしていた!と自分に問いかける言葉が、めちゃくちゃ共感でしかなく。
夢を諦めず、自分を信じ続けることの大切さと、その成功を知ることなく亡くなってしまったジョナサン・ラーソンの人生のあっけない終わりに対する悲しみと。No day but todayは私の大好きな言葉だけど、まさにジョナサン自身の生き方だったのだなと思った。鑑賞後、ジョナサン・ラーソンの記事を読んでいて涙が止まらなかった。

アーティストとしてのリミットと、周りの友人たちのAIDSによるタイムリミット。両方を表すチックタックと鳴る時計の音が印象的。

Moondance Dinerには一度行ってみたい!
Mayo

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