三郎丸

ステップの三郎丸のレビュー・感想・評価

ステップ(2020年製作の映画)
4.1
【人は何を頼りに生きていくのか?】

お話、
思いっきり!優しさウエハースに包まれた、シングルファーザーとその一人娘の心温まる成長物語。

主人公の父子を静かに追いかけ、丁寧に物語が進行していくので、じっくり作品と向き合うことができる。 本作の主人公は、武田健一(山田孝之)。彼は30歳で妻に先立たれてしまうが、妻の両親からの娘を育てるという申し出を辞退し、シングルファーザーとして一人娘の美紀を育てる決心をする。
父子は、様々な困難に直面しながらも、周りの人々に支えられ、懸命に子育てに邁進、やがて、娘の美紀は逞しく成長し、子育ても一区切りついたかに見えた時、父子にとってまたまた大きな問題が訪れる…

素晴らしいよ!ポイント
・父子に様々な出来事が起きるが、過剰な展開にせず、エピソードとしては淡々と進んでいくところ。
話の本筋は
【父と子供の成長】
なので、過激な展開は不要。
しかし、本作品の出来事は明確にスッキリした回答は用意されない。
鑑賞者に敢えて投げつけてきているのかな?と感じます。
幼い子供のサポートに対する問題は現実社会において、深刻な問題です。
・【きれいごと】にし過ぎない。
新しい家族を迎えつつある、父子の想いはなかなか噛み合わず、次第に関係はギクシャクするが、本作品が正解とはなっていない。
お母さんではない人に「お母さん」と敢えて呼ぶこと。
娘が大人の対応をした結果、うまく転がったが現実社会ではそんなシンプルに事は解決しないと感じます。
・國村隼、余貴美子など、脇を固める俳優陣
文句なし!
特に國村氏の終盤の演技は凄いの一言。
葛藤がちゃんと伝わる演技は痺れます!

ここは残念です!ポイント
・どこか都合良く展開してしまった。
父親が新しいパートナーを紹介し、娘は吐いてしまうほど拒絶していたにもかかわらず、比較的すんなりまとまってしまったかな…もっと揉めて父親が苦悩しないとウソっぽく見えてしまう。
広末涼子演じるパートナーを敢えて家へ招き、拒否状態の娘が自室に閉じ籠ってから部屋から出てくるタイミングが早い!作品内で小一時間くらいじゃない…!?
ワタシは思わず「はやっ!」と呟いてました。

作品としての派手さはないが、
【ひとつの家族】
を通し、子は父を頼り、父は亡くなった妻やパートナーを頼り、それを取り巻く親族は頼られる理想の存在を頼る。
それぞれの立場を見つめることで自己投影ができ、じっくり感動に浸れる良作。
三郎丸

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