ちこちゃん

ブレイブ 群青戦記のちこちゃんのネタバレレビュー・内容・結末

ブレイブ 群青戦記(2021年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

冒頭のシーンから、想像を裏切られる映画である。 なぜなら、冒頭は凄惨な高校生の虐殺シーンからスタートするからである。それから始まらなければならないのは、主人公蒼の変化を際立たせる必要があるからである。つまり、自分が力があるにもかかわらず自信がなく、消極的であることから仲間を救うために積極的なリーダーの役を担うまでの主人公の変化と成長を際立たせるためには、そのきっかけがショッキングでなければその変化を誘発することが映画として自然な流れにならないからである。従って、映画の冒頭の凄惨な大量虐殺ともいえるホラーのような前提が必要になるのであろう。
しかし、それが成功したかといえば、疑問が残る。違う前提があったとしても、主人公蒼の変化のきっかけは得られたかもしれないし、映画としてより豊かな表現になったのではないか。つまり観客が想像できる余地を残すことも映画には必要なのではないかと思う。この映画は、これでもか、というぐらい凄惨さを映すことで観客を説得することを試みたが、それが効果的に作用したとは思えない。単に凄惨さと高校生を虐殺するのかといった倫理的な問題をはらみ、観客の頭に疑問が生じ、それから先の筋書が素直に頭に入らなくなるからである。

高校生たちは、桶狭間の戦いの直前にワープしてしまい、仲間が織田軍の人質に取られる。人質奪還と自分たちの身の安全策を歴史的な流れから考え、徳川側につくことにする。それぞれのスポーツの特技を武器に織田軍の砦を攻めることを作戦として立て、実行する。そこのアクションはおもしろい。ドローンを使って、相手陣地を偵察し、野球、アメフト、弓道などそれぞれのスポーツの道具と技を使って武士を倒して砦を攻めていく。そして、最後に主人公蒼は、徳川家康として、その時代を生きていくことを決意するのである。

演技としては、新田真剣佑さんと渡辺圭祐さんの格闘シーンが良かった。特に新田真剣佑さんのアクションのキレがキレキレでよい。
あと、織田信長役の松山ケンイチさんと徳川家康役の三浦春馬さんは、さすがの存在感である。特にに徳川家康役の三浦春馬さんは、主人公役の新田真剣佑さんを導く役割を果たすのであるが、とにかく華がある。これほど、華を感じさせる役者はそう多くはない、つくづく残念である。「加勢いたす」と両手を広げて現れる様は、目を引き付けられる。

徳川家康は、主人公を弾から守るために、変わりに撃たれれ、自分の刀を主人公に授けるのであるが、それが三浦さんから新田さんへのメッセージなのかと映画とオーバーラップして、感慨深いものがあった。
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