コンテナ店子

ハニーランド 永遠の谷のコンテナ店子のレビュー・感想・評価

ハニーランド 永遠の谷(2019年製作の映画)
3.0
アカデミー賞のドキュメンタリー部門にノミネートしていたので期待していましたが、いい部分も悪い部分もある映画なので、ちょっと評価しにくいなと言うのが率直な感想です。

まず何といってもこの映画はドキュメンタリー映画としては他にないような構成になっていました。まるで普通の映画のように、カメラマンがいないかのように中の人たちが行動している独特な構成で、インタビューやカメラマンに話している様子は全くなく、ただ日常を過ごしている様子をカメラが捉えている映画でした。それを撮ろうとする試みだけでも十分凄いですが、演技どころか映像作品にすら縁がなさそうな登場人物たちもそれに合わせた日常生活をちゃんとしていて、それは本当に素晴らしかったです。まるで野生の動物を撮影しているかのような自然な姿でした。

ただ、登場人物以外の部分はけっこう違和感が多かったです。道がない場所なのに登場人物が進んで行く方に先回りしてカメラマンが立って取ったと思われるようなシーンもありましたし、犯罪に近いようなことをしてるシーンでも特に隠しカメラとかでもなく普通に撮影してたので、どうやってオッケーを取ったのか疑問なシーンもありましたしで、全体的に作り物っぽかったです。何か説明できる理由があるにしても、世界中の全員にそれを出来るわけではないので、敢えて質の悪いカメラを使うなど作り物っぽく感じさせない何かが欲しいなと思いました。

ドキュメンタリーとしてでなく、1つの映画として評価するとしたら、音響が素晴らしかったです。自然の音を多用していましたが、その音の収録が非常に美しく、動物の鳴き声にも感情が籠っているように感じましたし、ハチの羽音も時によって聞こえ方が変わって聞いているだけでも美しい自然を感じ取ることが出来ました。

撮影や音響など素晴らしく評価できる部分も多く見られますが、上記に書いた部分以外にも何度も同じような情報を出すなど、編集の部分で取捨選択をミスってしまったのかなと感じる部分が多かった映画に感じました。メッセージ性も吸収できるし、心も動かされるような脚本ではあったので、ドキュメンタリーが好きな人は見てもいいかもしれませんが、かなりスローなのもあってそうでない人にはちょっとお勧めしにくいです。
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