ぼのご

ひとくずのぼのごのレビュー・感想・評価

ひとくず(2019年製作の映画)
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再上映で監督の舞台挨拶があったので二度目の鑑賞。リピーターのことはおいくずって呼んでいるらしい…!笑

元々は別の作品の取材で発達障害についての話を精神科の先生に聞いていた際、虐待についての話も聞きショックを受け一晩で脚本を書き上げて、その後も情報集めを重ねて詰めていったという。
とにかくその熱意が作品の端々に溢れ出ていて心に響きっぱなし。これまで目を背けていた自分に対する怒りも感じる。まずは目を向けて、関心を持たなければいけないという想いが作品の根底にあるんだと思う。

カネマサやマリ、リンたちの身体に残る傷痕、火傷の痕が痛々しい……。
そうした虐待は心にも深く傷を残す。いわゆる「普通」の生き方が出来なくなったり、どう愛情を表現すればいいのかわからず虐待にはしったり。被害者が加害者になる負の連鎖。フラッシュバックめいた回想がつらい。

昨年話題になった『ケーキを切れない非行少年たち』にも似た内容の記述が少しあったけど、こうした人たちは助けを求めることも出来ず多くの場合目を向けられることも無く、世の中から忘れられていく。本当は社会が最も手を差し伸べなければならない人たちなのに。

でもその中で痛みを知っているからこそ人の痛みがわかるという人もいて、それがこの映画の救いになっていた。カネマサ、マリ、リンの三人は終盤になると心から分かり合っていて、神聖さすら感じるほど尊い関係。

またカネマサの破天荒具合は観ていて痛快な面もあって、無茶苦茶な物言いや行動が笑える。特にそれが普通や一般のぬくぬくとした人間らに向けられる瞬間が、正直すごい爽快感あった。
つらいことは沢山あってもハッピーエンドなのが大好き。この映画は幸せに終わるのが絶対良い。傷付いた人が救われるのは本当に何よりも嬉しいです。
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