新潟の映画野郎らりほう

17歳の瞳に映る世界の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

17歳の瞳に映る世界(2020年製作の映画)
3.5
【狭小な世界】


キャメラは全編に渡って 人物を接写で捉える。
画面は人物に依って埋め尽くされ 景観が映る余地なぞ当然無い。
仮に映ったとしても、人物極大接写故のシャロウフォーカスに依って 霞み、ぼやけ、遠景は総じて〈展望〉を欠く。


鼻に針を突き刺す時。下腹部を打擲する時。そして、NY地下鉄車両の薄汚れた窓 ― 主人公少女オータム(フラニガン)は 劇中、幾度も 〃も 鏡 或いは窓といった鏡写装置に映り込む―。


接写と鏡写。上記二点だけでも、少女が 周りが見えず『自分しか見えていない』事が諒解出来よう。


社会性。生命倫理。性にはもっと歓びもあるし、素敵な男性だって 世の中には幾らでもいる筈だ。
世界には もっと気付く事、見なきゃいけない事が沢山ある。これだけが世界じゃないんだよ。
然し彼女にはそれが見えない、見る事が出来ない。

自分自身の事で目一杯だから…。



彼女に見えるのは 昨日と今日だけであり、明日の〈展望〉は存在しない。

せめて…、鏡像が 自分しか見えない〈自分本位〉の表徴ではなく、もう一つの世界〈異なる可能性〉を示していたのだと願いたい。




《劇場観賞》