新潟の映画野郎らりほう

三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

3.2
【トゥダーイ】


〈東大〉

壇上向かって“右”側に三島由紀夫。“左”側に全共闘連衆。
当時の討論会主催者に その意図があったかは定かではないが、映画の作り手にとっては構図的意図を込めなければならないのである ― 解り易い右派と左派の相剋として。
その上で、45年目でも49年目でもない“50年目の真実”を謳うからには、新たな視座が必要となるだろう ― 作り手にも、無論観る側にも。

その端緒が、ポスターをはじめ 本作のビジュアルワークとしても使用されている「壇上に立つ三島」を後方から捉えたモノクロームのスチル写真となるだろう。
そこでは、右派と左派の立ち位置が逆転し 且つ 誰も色付けされていないのである。



当時の討論会映像に 逐次 新規証言映像がインサートされる構成で、その新旧画面解像度の差異に、当時の粗雑さに比して 現在は綺麗で安全と感じる一方、快活で躍動的である50年前と 窮屈な映画フレームに閉じ込められインタビューを受ける現代とに、名状し難い気持ちとなる。

それは、相対して現代は 意識下無意識下問わず より強固で透明な檻の中にいる事の諷喩でもあるだろう。


三島を霊長目に見立て 拝観料を徴収していた東大全共闘連衆が、50年を経た今、窮屈な映画フレームの枠組み“檻”に入れられ 逆に映画館で見世物となるアイロニー。


社会にのまれる儚き一単子である事を十二分に自覚しつつ 唯一無二の自律であれと。私も 何等変わらぬ同じ穴の狢なのだから―。

〈to die〉




《劇場観賞》