新潟の映画野郎らりほう

モールスの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

モールス(2010年製作の映画)
2.0
【答え合わせ映画】


『おい、女の子』

これは主人公男児を侮蔑する虐めっ子の言葉だ。 ~性徴が遅れ「男らしくない」主人公を「女の子」呼ばわりしているのだ。
確か「僕のエリ」では 長髪華奢中性な体躯をただ曝すだけで、男らしくない事・性徴が遅れている事を表現していなかったか。 それに比べ「モールス」の全てを台詞にしちゃう安易さよ。

「僕のエリ」のレビューで私は「第二次性徴直前・無意識的性欲動下の最後の純真」が"暗喩"として込められていると書いた。 惑溺的テーマは、しかし巧みに"秘められて"いるのだと。
「モールス」は違う。 少年は隣家の男女の営みを「あからさまに覗き」、筋肉質な若者を「あからさまに覗き」、女子児童の水泳授業や 少女の着替えにも「あからさまな眼差し」を向ける。 つまり「僕のエリ」の暗喩的要素を 徹底説明-直喩-している。 メタファーだと解り難いとでも思ったか? そんな解説はパンフの中でやってくれ。
そもそも「秘められて」いたからこそ 少年は「性に気付いていない」=[無知]=[純真]を訴求出来ていたのであって、これじゃあ興味有々な確信的エロ坊主だぞ。 全然イノセントじゃないだろう。
侮蔑言葉の「おい、女の子」は宙ぶらり。

親切心が過説明に陥り、結果最主題を履き違え あらぬ方向へ着地した。 全てが台詞頼りの心理描写。 プロット・展開は完全踏襲の為、ストーリー的新味もまるで無く リメイクの醍醐味である別モチーフの付与も希薄。 メタファー部の解説のみに注力した「答え合わせ映画」。
こんなリメイクいらない。




《劇場観賞》