カツマ

トゥモロー・ウォーのカツマのレビュー・感想・評価

トゥモロー・ウォー(2021年製作の映画)
4.2
雄弁に未来は語る。人類の終わりを、絶望の運命を。愛する子たちの将来は、エイリアンに侵食された地獄となった。そこに挑むは娘を想う一人の父親。明日の戦争のために彼は闘い、そして、今と未来を繋ぐ礎となる。絶体絶命の人類に見えた一縷の光線、それを辿り、彼は家族の未来の救世主となる。

クリス・プラットが主演と製作総指揮を兼任したSF超大作が、Amazonプライム配信映画として登場。『レゴバットマン・ザ・ムービー』を撮ったクリス・マッケイ監督の実写映画デビュー作であり、超豪華な出演陣とド派手なVFXが大作としての風格を見事なまでに示している。本来ならば大きなスクリーンで鑑賞すべきなのは間違いなく、コロナ禍で配信映画へと転換したのはやや勿体ないほどの完成度。人類vsエイリアンという設定と、家族を視点の物語は非常に王道で、多くの人に響きやすい作品だろう。

〜あらすじ〜

元軍人で生物学教師のダン・フォレスターは、妻と娘を愛するごく普通の父親だが、研究者として働きたいという野心もあった。だが、その向上心とは裏腹に、研究所から届いたのは不採用通知の連絡。そんな彼が失意の後、娘とテレビでサッカーの試合を観ている時にその事件は起こった。
何とサッカーのグラウンドの上のワームホールの中から軍人と思しき人々が出現、衝撃的な声明を世界へと伝えたのである。その声明とは、自分たちは未来からやってきたこと、未来では人類が滅亡寸前であり、過去の人類の助けを借りたい、という信じられないものだった。
未来に起こる巨大な戦争を回避するため、政府は転送装置(ワームホール)を作り、そこから軍隊を派遣。だが、未来の敵は恐ろしく、死者は増えるばかり。ついには一般市民からも徴兵されるようになり、その順番は軍の経験のあるダンのもとへも辿り着こうとしていた・・。

〜見どころと感想〜

シンプルかつ分かりやすい設定のストーリー、そして、大迫力の映像といい、大作としての大衆性で見事にまとめ上げた作品である。特に未来のクリーチャーとのバトルシーンが圧巻で、狭い空間でのバトル、海上基地での決死の攻防戦など、鬼気迫るシーンの連続で息つく隙を与えない。展開もスピーディーに進むため、退屈するシーンも皆無。2時間越えの鑑賞時間を非常に短い体感で終えることができた。

キャストも非常に豪華で、まずは主演のクリス・プラットがあまりに盤石。彼は主演映えするため、豪華な出演陣の真ん中に聳える姿はもはや風格すら漂わせている。他にもオーストラリア出身の女優イヴォンヌ・ストラフスキー、『ザ・ハント』で強烈な印象を残したベティ・ギルピン(残念ながら今回はアクションは無し笑)、そして、物語の楔となる役どころで大御所J・K・シモンズを投入するなど、隙のない布陣で固められている。

人類vsエイリアン、という大枠の種族戦争を描きながら、ミニマルに家族への愛を再確認させる物語となっていて、非常に整頓された作品と言えるだろう。ある父親が壮絶な戦場を潜り抜け、本当に守りたかったものとは何か?家族の形、平和の形。そんなあり触れているように見えるものが、未来に待っていてほしい。だからこそこの映画は現在と未来を繋ぐバトンのように、その狭間で闘う者たちを英雄のように描いているのだろう。

〜あとがき〜

クリプラ主演の大作が劇場公開ではなく、まさかのアマプラの目玉作品として配信されました。本来は大々的に劇場公開されるはずだった作品ですが、コロナ禍の影響を受け、配信へとまわることになった経緯があるようです。正直、これだけ出来のいいSF大作ならば、大きなスクリーンで観たかったというのが本音。スマホで見るには勿体ないクオリティでした。

やっぱり大味な作品であるからこそ、今作のような分かりやすさは大事ですね。配信で気軽に見られるという利点を活かして、たくさんの人の大作欲を満たしてほしい作品でした。
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