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パーム・スプリングスのumisodachiのレビュー・感想・評価

パーム・スプリングス(2020年製作の映画)
3.5


4月9日公開の映画だが、飛行機内で観たので。

パーム・スプリングスで妹の結婚式に参加しているサラ。彼女と一緒に来ているナイルス。いきなり会場でスピーチをかましたラフな服装のナイルスは、サラにグイグイアプローチしてくる。意気投合したふたりはイチャイチャしはじめるが、謎の男が表れてナイルスを襲撃する。負傷したナイルスは洞窟へと逃げ込み、サラがその後を追いかけると……気づけばまた同じ日の朝に戻っていた。サラがナイルスを問いただすと、ナイルスは同じ日を数えきれないほど繰り返しているのだそう。どうやらサラもそのループに取り込まれてしまったようで……。

ポップで少し下品なタイムループ映画。ポンポンとリズミカルに繰り出される会話の応酬は楽しく、テンポ良く進むストーリーは飽きずにグイグイ引き込まれる。個性的な主演ふたりの芝居が絶妙で、なんとも憎めないのが上手い。スパイス的に効かせているJ・K・シモンズもさすがの存在感。飛行機で観るにはピッタリの作品だった。

下手したら何万回も同じ日を繰り返しているナイルスはどこか達観していて、繰り返しそのものを楽しく陽気に過ごす境地に至っている。いろんな人とアバンチュールを楽しんだり、イタズラをしかけたり、「どうせリセットされるんだから」という状況を逆手にとって刹那的に生きている。サラも途中まではそんなナイルスと楽しく過ごしていたものの、彼女はループからの脱出を諦めない。

ナイルスもサラもお互いに秘密を抱えていて、後半になるとその秘密がきっかけでけっこう深い次元へとシフトチェンジするのが面白い。ただ生きているだけでいいの?前に進む努力をしなくていいの?リスクを恐れて立ち止まっているだけで諦めるの?という、シンプルかつ普遍的なテーマが表面化してくる。

タイムループの種明かし的な部分を、あんなに懇切丁寧に解き明かそうとしなくてもいいのでは?とは思うものの(どうせ矛盾や疑問は残るんだしさ)、一応のオチをつけつつ余白を残した幕切れはなかなか興味深かった。

『恋はデ・ジャ・ヴ』系のタイムループコメディだが、ループに組み込まれているのがひとりではないというのが大きな特徴。一緒にループするのが運命の相手だったら、私なら「ずっとこのままでいい」と思っちゃうかもなあ。ただ、ナイルスとサラは抱えている秘密の重さが違うので、サラがなんとか抜け出したいと願うのもわかるのよね。そういう意味で、「リスクを冒しても愛する人の希望を叶えたい」という愛の力を描いているのも好印象ではあったかな。

『アバウト・タイム』よりは本格的なSFで笑えるけれど感動作というわけでもなく、『ハッピー・デス・デイ』よりも大人な感じ。そしてちょっと下品。ひとりで映画館で観るよりは、友達とお酒片手にダラダラ観るのにピッタリかな。



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