異国の空気を感じられるのは映画の楽しみの一つ。モロッコも、たぶん行くことはない場所だけど、こうして感じることができるのは嬉しい。
しかしそれ以上に考えさせられることの多い映画だったように思います。自分ならどうするだろう、と考えさせられる場面がとても多かった。その度に自分とは違う答えを示されて、女性二人の大人加減?というか人物像?に唸りました。
赤ちゃんにお乳を吸われる感覚、小さな手に触れて握り返されたりするときの感覚。それを手放すことの悲しみと子どもの将来を思う気持ちとのせめぎ合いの感情。出産は現代社会ではとてもデリケートな問題になっていると思うし、軽率なことは言わないようにしなければなと思うけれど、それは出産経験の有無に関わらずある程度は誰でも想像できるかなと思います。人類が生き物として命を繋いでいくつもりなら出産は外せない問題です。だからそこにか懸かるたくさんの問題には一個一個きちんと向き合って解決していかないといけないように思います。そう思っていてもなかなか踏み込んでいけないようなデリケートさもきっとあるのでしょうが。
最近、内密出産もニュースになってたけど、どんな事情にしろ未婚で子どもを産むことはまだ多くの国で簡単なことではないでしょう。そこに手を差し伸べることもまた容易ではない。だからこの二人もぶっきらぼうで少ない言葉と控えめな態度でしか思いやりや感謝を示せなかったということかなと思いました。そのあたりの描写が非常に上手いです。
そこに母に想いを寄せる男性とかを登場させて話に厚みを持たせているのもなかなか憎いです。娘の笑顔や明るさもいい。
アダムという名もなかなか深い気がします。深読みしすぎかもしれないけど、出産という人類が命をつなぐ営みの最初の登場人物だから(^^;?
ラスト、彼女の決断はおそらく私の想像で間違ってないと思います。彼女はとても生活力のある女性だし、やっぱり子どもを産むというのはどう転んでも人を強くはすると思うし。みんなが幸せになって欲しいと思いました。