新潟の映画野郎らりほう

ナイトメア・アリーの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

ナイトメア・アリー(2021年製作の映画)
3.9
【絶望的自覚】


劇中 幾つもの“扉”(門扉や窓を含む開閉装置)を開け放つ事で、男(クーパー)は 二度と後戻り出来ぬ領域へと踏み入ってゆく。
構図に配光、キャメラの移動線 等は偏執的に作為性に満ちており、そこにアドリブ性が感じられる余地は微塵も無い ―。
劇中のガジェットである“お化け屋敷的迷宮”や、個人の意思とは無関係に“運命づけられた道”を突き進んでゆく男の様相が、上記作品構造次元に依って為されている。



「ハッタリ / 演技 / 虚仮威し」に過ぎないが、それに 素直に感動する人がいる故 商売として成立する男の行為。
真相=深層(メタファー)が伽藍堂である事は 決して悟らせず、表層(クリシェ)さえ 巧く提示し続けていれば評価は安泰。
尤もらしさの為には適度な現実感の付与/リサーチも必須。
作り込んだクリシェ/表層に興味を示さず、メタファー/深奥を覗き込んでくる批評層は厄介な存在である。
究極的には「見世物」でしかない自覚。


「映画監督と観客の関係性」が絶望的自覚で以て闡明されている。




《劇場観賞》