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無頼のsiのネタバレレビュー・内容・結末

無頼(2020年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

2時間半近く、一時も退屈しなかった。これだけで凄いことである。

井筒版「ゴッドファーザー」だが、日本に置き換えた時にダサくなるのも構わず堂々とやっているのは良かった。パーティーシーンの貧相さが逆にリアリティーを生んでいる。また、シーン、シーンがアクションの途中から始まることが多いため説明的にも無駄に長くもならずテンポ良く進む。

役者も北野武映画と意図的に被らないようにしているのかギャラの問題なのか、たまに見るけど名前は知らない人が多いのだが、ちゃんと怖かった。それにしてもブランキーの中村達也はいい顔してるわ。

EXILE 松本利夫は顔も声もなかなか良いが、小物感があって組長っぽくはなかったのがちょっと残念。だが、ヤクザ界が斜陽になって、凄みより小回り、気配りが必要な時代の組長ってことでこのキャスティングなんかな。スーツも着物も着せないのは何故?と思ったが。

奥さんになる女がホステスでも職場を離れれば酒も注がない、ヤクザにも動じない、しかも一緒に寝る前に捕まってしまうのに結ばれるっていうのが良かった。浮気するけどヤクザと言えど尻には敷かれるっていう関係性には夫婦というより同志って感覚を抱き、一昔前のヤクザ映画ではないという気概もあったのかも。

ラスト、組長の引退で下っ端の組員も引退を決意して、今まで詰めた指を集めて土に埋めるシーンが凄く良かった。組長の奥さんが画面から出て行く中、誰に言うでもなく組長の思い出の言葉を呟く。劇中に出て来ない台詞だが、あの組長なら言うだろう。そう思わせる物語がちゃんと刻まれていた。

相変わらずのフィルム撮影も嬉しいが、照明はもう少し頑張れなかったのかな、とは思う。30年前に作られていれば、もっと重厚な画面になっていただろうな。
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