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BLUE GIANTのsiのネタバレレビュー・内容・結末

BLUE GIANT(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

ジャズを極めたい男がひたすら突っ走る映画で爽快だった。

冒頭、雪の中でもサックスの練習に励んでいる主人公、大。これだけで毎日努力していることが分かるのが良い。

大は普段は飄々としているのにジャズだけはとにかく夢中に取り組んで、周りが勝手に惹きつけられていくのが良かった。大はとにかく一生懸命サックスを吹くだけ。一切恋愛の話がないのも潔い。サッカーに夢中だった玉田がジャズに乗り換える転機も実にスムーズだった。

自信満々の天才ピアニストの雪折が、プライドは高いまま徐々に仲間を思いやる気持ちが芽生えていく様も素晴らしく、日本一のジャズライブハウスSO BLUEの支配人に鼻柱を折られてから、さらに人間的成長を遂げていく流れも涙無くして観られない。支配人にあれだけ言われてもSO BLUEへの憧れ、メンバーの大、玉田とプレイしたいという一心でひたすら練習に打ち込み、手応えが得られない焦りのままメンバーに謝る雪折。でも実は支配人からの言葉はきっかけに過ぎず、元は素人の大から気遣いやプレイについてを徐々に学んでいるからこその成長であるっていうのが巧い。玉田のひたむきさと負けん気も貢献してるし、キャラ設定が見事。

遂にSO BLUEでのライブが決まって、この展開で誰か死ぬとかはやめてくれよ、と思いながら観ていたら、雪折が事故に遭うことになり、かなりガッカリしてしまった。死ぬまでは行かないから良かったけど、せめて突き指くらいにして欲しかったな。まあでも残りの2人でステージに上がるのは熱い展開だし良かったんだが、アンコールで雪折が現れ、左手だけで演奏するってのはさすがにズルい。もちろん否応なく涙は出てしまったが、泣かせば良いのか?とも思ってしまう。「BLUE GIANT」の由来を説明するインタビューが挟まれるのも今じゃないだろう、って思ったし。あの演奏は遮らないで駆け抜けて欲しかった。しかし、曲が終わって即エンドロールという展開には凄くグッと来た。

それなのに。ああそれなのに。最後のオマケも不要だったな…。

たまに入る3Dの画も気持ち悪かったし、演出ももうちょっと抑え目な方が好み。直接涙を見せ過ぎなのはちょっとなあ。だが、音楽は曲も演奏も無茶苦茶カッコいいから欠点も目を瞑れる。ドルビー7.1chシアターの音響も素晴らしくて映画館で観た方が良いのは間違いない。あと、本場のジャズミュージシャンが出て来るシーンは落ちついた演奏にして、主人公たちのバンドJASSとは違った角度の上手さをさらりと見せているのも良かった。ジャズは熱さだけじゃないからなあ。

とはいえ、好きなものに全力で青春をぶつけて切磋琢磨していく群像成長譚としては充分過ぎるほどの良作。
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