このレビューはネタバレを含みます
原作者のラジオリスナーであったこともあり、公開直後にビデオでは観てたがほぼ記憶がなく、リバイバル公開されるほどだったかなあ？と半信半疑で観に行った。
結果、確かに凄かった。何で記憶にないのか分からないくらいトラウマになるレベルで怖かった。
序盤から執拗に挟まれる電車、窓に映り込む主人公の鏡像が、やりたくないことをやらされるという辛さから夢か現実か？多重人格か？の鏡像関係に移り変わっていく展開は実にスリリングであった。ネットに今日の出来事が心情まで的確に描写された日記が知らず知らずに公開されているというのは、麻耶雄嵩の小説にも似たような展開があったが、本当に恐怖であった。犯人としか思えない行き過ぎたアイドルファンの存在もミスリードにしてはやり過ぎかと思ったが、逆に事件に加担させていくといく展開だったと分かり、これは巧いと唸ったし、真犯人も未麻であって未麻でない、他者による同化だったというオチで、中盤の夢反復で未麻の部屋がところどころ変わる違和感の正体はこれだったのかと驚愕、感嘆した。
TV用のレイプ撮影シーンやカメラマン襲撃シーンが異常なまでの臨場感で気持ち悪過ぎて二度と観たくないが、これは監督に才能があり過ぎるせいであろう。池田敏春の映画くらい鬼気迫るものがある。ラストであれだけの事件に巻き込まれても女優として普通に復帰しているという異常さも｢死霊の罠｣と似ているし。ラストの未麻をフワフワ追いかけるニセ未麻もアニメならではのスピード感と人格乗っ取り表現で気持ち悪くも素晴らしかった。
今敏はきっと実写でも凄いのが撮れた方だろうけど、今更ながら早逝が悔やまれる。
あと劇中のアイドルソングもかなりちゃんと作っていて、低予算なのに凄い。このあたりは原作 竹内義和の美学かな。キャラデザインは江口寿史タッチがかなり損なわれていたのはやや残念だけど。
