円柱野郎

ファーザーの円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

ファーザー(2020年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

ヘルパーと衝突し娘に心配をかける80歳のアンソニー。
新たなヘルパーに来てもらう話も進む中、次第に彼にとって妙な出来事が起こり始める。

観終わってみれば「認知症を追体験させられていたのか」と納得のいく話だが、観始めてからしばらくは「どうも話が噛み合わない」「時系列がいじられてる?」「これは叙述トリックの一種か」と混乱をきたすような展開に振り回されてしまった。
でもそれこそが、この話の結論である“認知症の人が認知している世界”なのだと気づいた時、とても心にくるものだあったというか…苦しくなってしまった。
なるほど記憶の混濁を主観的に見ればこの様になるのか、と。
そりゃあ話も噛み合わないわ。
主人公のセリフをして「すべての葉を失っていくようだ」と表現されたそれは、とても物悲しく、印象に残る表現だ。

認知症である主人公を演じるのは名優アンソニー・ホプキンス。
本作の演技で2度目のアカデミー主演男優賞を受賞したけれど、それも納得の演技。
映画は主人公の主観で大半の物語が進むので、映るもののほとんどが認知症のフィルターにかかっているわけだけど、映画的なギミックも上手く使いながらも彼の迫真の演技で“現実と思い込みの境目”を曖昧にしているところが良くできていたね。
円柱野郎

円柱野郎