kuu

アシスタントのkuuのレビュー・感想・評価

アシスタント(2019年製作の映画)
3.7
『アシスタント』
原題 The Assistant.
映倫区分 G
製作年 2019年。上映時間 87分。
2017年にハリウッドを発端に巻き起こった#MeToo運動を題材に、憧れの映画業界が抱える闇に気づいた新人アシスタントの姿を通し、多くの職場が抱える問題をあぶり出した社会派ドラマ。
『ジョンベネ殺害事件の謎』などのドキュメンタリー作家キティ・グリーンが初めて長編劇映画のメガホンをとり、数百件のリサーチとインタビューで得た膨大な量の実話をもとにフィクションとして完成させた。
主演はNetflixドラマ『オザークへようこそ』のジュリア・ガーナー。

名門大学を卒業したジェーンは、映画プロデューサーを目指して有名エンタテインメント企業に就職する。
業界の大物である会長のもとでジュニア・アシスタントとして働き始めたものの、職場ではハラスメントが常態化していた。
チャンスを掴むためには会社にしがみついてキャリアを積むしかないと耐え続けるジェーンだったが、会長の許されない行為を知り、ついに立ちあがることを決意する。

今作品は定型的な映画でもなきゃ、説教をする映画でもない。
状況を提示して中心人物の葛藤を示し、
"んん~私ならどうするやろか?"
なんて問いを残してくれる。
簡単な答えはなく、合理的な理由を考えを巡らせたとて、どれも満足のいくものではないとは思う。
これは社会的な問題であり、是正される前に明らかにする必要がある。
現在の表題は、この問題のさらに有名で極端な例を明らかにしており、被害者、そして、この場合は、それを可能にする証人が直面しなければならない危険も示している。
"自分のキャリアを犠牲にすべきなんやろか?"
"最初の防衛線が加害者に有利に固定されているし、外部の法執行機関に行くべきなのやろうか?"
"同意している大人たちなんやから、本当に問題なんやろか?"
等々。
今作品は、ハーヴェイ・ワインスタインが映画業界の女性たちに対して長年にわたって行ってきた、ハラスメントからレイプに至るクソ犯罪行為の話から※インスパイアされた部分もある。
そのため、今作品では、この件に関する言及はほとんどなく、また、あまりに身近に感じられるような名前も一切出てこない。
具体的には、映画祭(カンヌ)と犯罪現場(ビバリーヒルズのペニンシュラ・ホテル)。
しかしまぁ、ジュリア・ガーナーは美しい。
受動的な人(社会人なら上司などから支持されないと動けなかったり、自ら何かを発信したりすることがない人のこと)が、自分がとても悪いと感じることを黙って目撃する、ちゅうこの役柄に、彼女のかなりのスキルが要求されることはない様に感じる(勝手に思てるが)。
加害者の姿を見せないという工夫で、彼女に焦点を当て続けている。
彼女を取り巻く登場人物たちは、適度にいかがわしく、わかりやすい。
大都会に来たばかりという孤独感も、とても心に響く。
生存が他者との協力に依存する、別の惑星にいるようなもちゃうかな。
ガーナーは押さえきれない魅惑的で、硬質で冷徹なボディランゲージで映画を感情を揺さぶる芸術へと昇華させてた。
ほんまこのアプローチは見事に機能し、行間を読むのに十分な知性を持ち、ジュリアに投げかけられるあらゆる微細な攻撃に対して、彼女が何も言わなくともスクリーンに向かって叫び返すことができてる。
今作品は、洗練されたシャープな表現ではなく、不公平な状況で長い間沈黙を守ってきた不信な女性たちの、多くの現実の物語と容易に類似してしまうために、イライラさせられ、退屈に感じるんは否めない。
せや、他人のイケない秘密を闇に葬る時代は終わらせなければならないのなら、現在進行形の不公正を冷静に検証した『アシスタント』は、不快感を無視される女性たちに語りかけ、自分たちが重要であること、自分たちの感情が注目されていることを勇敢にも伝えてるのを真摯に受け止めなあかんのかなぁと。
今こそ、それを行動に移す時なんやろな。
なんかデリケートな問題だけにどーも堅い感想になってしまった。
個人的には映画を見終わった後でも自問できる面白い映画でした。
kuu

kuu