るるびっち

RUN/ランのるるびっちのレビュー・感想・評価

RUN/ラン(2020年製作の映画)
3.9
白雪姫を殺そうとする王妃は、グリムの初版本では実母だった。
実の娘を殺そうとするなんて常識的にはおかしな話だが、現実にもよくある事だし、虐待というのもある。
しかし第二版からは継母に変更された。世間におもねったのかも知れない。

毒親と娘の関係を描く映画が最近は多い気がする。
何でもしてくれる優しい母は、一転すると子供を支配下に置く毒親になる。
面倒見の良い母親に一生面倒を見てもらうことが幸せなのか、例え困難でも自由を求めることが幸せなのか。
主人公の女子高生は幾つもの病気を抱え、車椅子生活で非常に自由が制限されている。
親に面倒を見てもらわなければ生きていくのも困難に思える。
彼女が自由を求めるのは我儘なのか、それとも過保護の母親から逃げ出すことが正しいのか。
やがて体の不自由な子だからこそ愛情深い面倒見の良い親なのだろう、という常識がひっくり返っていく。
自分の体自体が、サスペンスの元となるスリラー。
クライマックスでの、「ワシントン大学、可能性は無限」という文字が切なかった。

さて、白雪姫には王子様と結ばれた後の続きがある。
披露宴で招待した母親に、真赤に焼けた鉄靴を履かせるのだ。
母親は死ぬまで踊り続けましたとさ、めでたしめでたし💛

毒親に育てられた娘は、ちゃんと復讐する有能な子に育ったのである。
そこをカットして穏便に済ませる事は、見たくない物から目を背ける無責任者を育むだけだと思う。
おとぎ話のマイルド化反対!!
『カチカチ山』で狸はお婆さんをただ縛ったのではなく、婆汁にして爺さんに食わせたのだ。「うまいうまい」と言って爺さんは食ったのだ。
サイコパスな狸の悪行を誤魔化してはいけない。
結果、狸が一番恐い。めでたしめでたし。
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