とりん

RUN/ランのとりんのレビュー・感想・評価

RUN/ラン(2020年製作の映画)
3.8
2022年84本目

公開時から話題だった作品をWOWOWオンデマンド使ってようやく観れた。
なかなかに胸くそな映画だった。
毒親がテーマのヤバめな作品とは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。
こんなに狂った人を観たのも久しぶりだ。
子どもを愛するが故に束縛したり、虐待したり、そういう話はあったけれど、本作はその斜め上をいく。
自分の子どもが健全者だったにも関わらず、自分の手から離れないようにする、ある意味親離れしないようにするために人外の薬や毒物を与えて、不自由な身体に仕立て上げた挙句、終いには本当の子どもじゃないと来た。なかなかのぶっ飛び具合だ。
心理描写の部分もかなり上手く表現できている。中盤の監禁されている自分の部屋から脱出を試みるシーンなんて、一歩間違えれば死を意味するのに、逃げるしかないという意志のもと必死にもがいて何度と危ないシーンを超えながら脱出する。そこで彼女の頭脳の高さも発揮されている。
逃げなければいけないという意志を観ている側に見せながらも、母に対する後ろめたさというのが少なからず感じるている。もちろんそれは恐怖心と入り混じってはいるものの、ここまでずっと支えてくれていた母の真実に対し驚き動揺を隠せないのも事実だし、そこは一種の母と子の心理的な部分もあり、それがリアルに映し出されている。
だからこそこの胸くそ感というか母に対する嫌悪感に加え、妙な感情を抱いてしまう。
待望だった我が子が未熟児で生まれ、たった2時間の命だった。その時に目にした元気な赤ちゃん、羨む気持ちはわからなくもないが、盗んでそれを育てるというのも実際起こり得る事実的な事象だ。この辺りは他の作品でも描かれたいたりしそうで、そこだけだと少なからず同情感は出る。しかしそこに毒を盛るというのが大きなポイントだろう。
タイトルもいい具合にハマってるし、ラストの立場が変わった復讐を見せたシーンで終わるのも良き。
本作は「search サーチ」でPC内の画面の中だけで展開するサスペンス映画を奇抜で独創的な発想で作り上げたアニーシュ・チャガンディ監督の長編2作目。前作より本作の方がぶっ飛んでるし、こだわりも深い気がする。割と表面的た部分を捉えたところが大きいが、考察を重ねるとよりこの作品の深みにいきそうな気がする。そういう部分を作ってくれる監督の今後にも期待したい。
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