かつきよ

RUN/ランのかつきよのレビュー・感想・評価

RUN/ラン(2020年製作の映画)
4.0
面白かった!!当たり映画です
クオリティ的にはもっと評価高くてもいいと思いますが、低評価なのはラスト終わり方の方向性賛否両論といった感じですかね
自分としては逆にああ終わってなかったら、クオリティは高いけど着地は……と思って評価下げてたと思います。

◆雑感

タイトルがRUNで、話の内容はCMなど見ると雰囲気は知っていました。
人間怖い系のホラーで、体が不自由な中主人公がどう逃げるかを描いたスリラー映画

まぁ、あるあるだし展開は読めるけど話題だから見てみよう〜、そんな気持ちで鑑賞し始めたのですが、グイグイと魅了され最後までゾッとする、とにかく話運びが上手くて、映画全体を通して緊張感の演出が絶妙!
どんでん返し!とか、予測不可能な超展開!といったエンタメ性は無いものの、だいたい方向性はわかるのにハラハラせざるをえないスリル、覚悟しててもゾッとしてしまう諸演出は非の打ち所なし!
展開上辛いところ、胸糞設定はありますが、個人的にはスリラー・ホラーエンタメとしての完成度が圧倒的すぎて、総合的に考えても、とっても良質な映画を見ることができたなと満足感でいっぱいです。

◆雑感2

クロエ役の方、車いすから降りて這ったりする演技もあるわけですが、下半身不髄どうにもリアルだなーと思ったら、本当に車椅子の役者さんなんですね
真に迫るというか、迫力のある演技
プロの健常者の演者さんがやっても絶対に真に迫る演技になっていたと思いますが、それでは絶対に出せない迫力があったのも確かです

◆雑感3

かなりシンプルなストーリーラインの映画なので、そこまで脚本自体には期待していなかったのですが、かなりしっかりと面白かったですのでそこも評価点です。
丁寧で着実な伏線張り、伏線回収もちゃんとあり、お見事でした。

◆雑感4

この映画、searchの監督さんだったんですね
あちらも、ただ原作を駆使して娘を探すという設定面白映画で無難な面白さなのかと思いきや、映画史に残してくれ!と思ってしまったくらい作り込まれた名作なので、今作のクオリティの高さが一瞬で腑に落ちました。
一気に、監督ファンになっちゃいました

◆雑感5

かなりシンプルなタイトル。シンプルなタイトルって個人的にはそんなに好きじゃ無いんですが、今作に関しては見た後謎の納得感はありました

RUNって言われたら走れ!って思いがちですが、洋画をよく見る方ならRUN=逃げろ!!ってのは馴染みのある表現だと思います。
そこまではいいのですが、主演女優さんを本物の車椅子使用者にしてまで不自由さの描写演技にこだわったこの作品で、ESCAPEでもGET AWAYでもなく、あえて走れ!という意味のが思い浮かぶであろうRUNにするの、なかなかのセンスバリバリ
短くてもなんでも、こういう訴求力のあるタイトルセンスというのはやはり光る時は光りますね



以下、ネタバレ感想でわっ!と思った所を





















※以下ネタバレ有り













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※ネタバレ!!!!
















◆子供拉致の伏線


冒頭ショックを受ける母親のシーン

不整脈
血色素症
喘息
糖尿病
下肢筋無力症

画面に表示される文字

障がいはいろいろありますが、うちの子が選ばれたのは○○でした
みたいなアナウンスが続くのかと思いきや、そのまま本編に突入

え、生まれてきた赤ちゃん、これ全部盛りってこと????と開幕早々の衝撃。
こんなの生きてられるわけなく無い??と思ってしばらく????状態だったのですが、クロエの生活を追っていると、あれ全部盛りなの本当なんだ……と納得させられる、わかりやすいながらも衝撃的な演出。
まぁ、本物のクロエは死んでたわけですが……

ラストで冒頭の映像の続きがわかる演出は正直に痺れました
母の嘆きは、子供が病気を持ったことじゃなくて、子供が死んでしまったことによるものだったんですね
さりげないドデカ伏線にぞわり

病気の子なら守ってあげなきゃいけないわけだし、わざわざ悪化させる必要ないんですよね
なのに悪化させるような毒盛るような行為をして、どういうことなのか違和感は少しありたした

そして、実はクロエは健康優良児だったという写真の開示
衝撃的ではありますが、冒頭の嘆きはじゃあ何?という疑問も、テンポよく伏線してくれる怒涛の展開
やっぱり面白い

追い詰められたクロエがとった自殺未遂もかなりパンチが効いてる
神経毒で脳破壊されるくらいなら、自分の意思で死ぬか生きるのかの賭けに出る
相当の勇気と極限
演技もまたいいんですよね

母も、娘を愛してる……といっていいのか。歪な愛とも呼べない、もはや歪みきった執念みたいなものがあって自分が死んでは困るって分かってたからこその作戦……このギリギリな感じがたまらないです。
そこらへんの映画だったら、コントロールできなくなったからあなたを殺します!と母が激怒して終わる所
それを撃退して終わりとか、そんなところで終わってしまいそうなもの

病院に逃げてからの活劇も見応えがありましたね
若干消化試合感はありましたが、ボリュームという点においても、母の異常性、どこにも逃げられない絶望、それ込みでのスリル
どこをとっても面白かった

無事母は射撃され、クロエ解放、よかったね〜という終わり方

なのかと思ってましたよ(後述)



◆母の異常性 

日常に潜む違和感、母の狂気明らかになってくるシーンはじわじわと沁みました

自分の薬じゃない薬……

インターネットが使えない
そこまでする必要ある?明らかにおかしい

最初に痺れたのは、緑の薬の正体
毒薬なのは予想内です
誰もがまともな薬では無いということを考えてたでしょうし
そこで明かされたのが、まさかの「犬用」麻酔薬

えっぐ
と思って、クロエほどではないにしろ画面のこちら側にも大打撃
誰がこんなこと思いつくんだ

普通に神経毒もられてました、というのより抉るような酷さを感じました



◆ラストシーン

かつての母に面会をしにくるクロエ
このシーンなんだ?と、最初はこの映画の怖さを全然理解してませんでした

現状報告していくクロエ
歪んでいようがなんだろうが、愛を与えてもらっていた?という部分は少なからず?あるので、許してないけど感謝してるよ、みたいなオチなのかなと
そうだったらクソつまらんですわよ、とか思ってたら

「お薬の時間よ」

と言って口から取り出す緑の薬
えっぐ

これ、思ったんですけど、話聞いてる間のダイアンママ、怯えてるんですよね
ということは、これ以前にもクロエに怖いことをされてるってこと

つまり、クロエは育ての親に面会する、という名目で定期的に現状を報告しにきていて、その度にあの薬を飲ませてるってことなんじゃないですかね。

自分がやっていたことと同じことを永久にされ続ける……その効果についてはダイアンママが1番知ってるわけですからね
わかってて犬用の麻酔薬飲まされるのは拷問でしか無いでしょうね
究極の復讐です

ダイアンのことをかわいそうとは思いませんが、被害者で、かわいそうで、きっといろんな視聴者が幸せを願ったクロエの……狂気で幕が降りる映画。ゾッとしない人いないでしょ

ダイアンへの狂気的な憎しみ以外は真人間として日常生活送れているようなのが、また、沁みます

クロエが闇堕ちした……と言い切っていいのか、このくらいの復讐する権利持ってると思う自分と、それでも、真人間になって普通のハッピーエンドしてほしかったと思う自分とがいて、とにかく割り切れない気持ちで映画を見終わります

また、薬が緑色なのがにくいですよね
薬がありふれた色だったら、なんの薬飲ませてたんだろうってなりかねないところ、緑なんて特徴的すぎて……あの時の薬でやり返してるんだって一瞬で理解できちゃいます。

ある意味ダイアンの教育の賜物。自分の背中を見て育ってくれたんだから、母として大成功……ですよね。。。

本当に面白い映画だった
監督の次回作も絶対見ます
かつきよ

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