Anima48

ビバリウムのAnima48のレビュー・感想・評価

ビバリウム(2019年製作の映画)
3.6
付き合いが長い友人に子供ができるとすっかり顔を見せなくなったり、たまに会うと子供の話が続いたりする。雑誌に出てくるお洒落なパパ・ママというわけにはいかず恰好も育児に合わせたものになり、育児に集中すると外にも出かけられず、交流が少し絶え、他に気晴らしに何かすることがなくなるって話していた。

緑色の新築の家々が地平線までずっと続く街は、住宅展示場のようで全く人の気配がなくて無菌状態のように清潔だけど、少し不気味。夜になると、明かりが灯るのが二人の家だけで、他の家は幽霊屋敷のように真っ暗。そこで食べる食事はどれも味がしない。迷って町から脱出できず、誰にも会えずに2人きりで子供を育てるように託される。今現在この映画を観ていると状況はまるでコロナの隔離生活のようにも思える。さらに最悪なことに、電話やネットも通じない。

託された不気味な子供は二人の会話・ふるまいの物まねか限られた単語しか話さない、地声は低く大人の男の声で、発音する言葉は文章ではなくって鳴き声の類にも感じる。不満があるとひどく不快な叫びを出して好奇心なのかいつも二人を見張っているように見える。何か人間に近しいが何かが全く違う存在に見えて、ママと呼ぶけれど別に愛情を求めてはいないようだった。2人は、子育ての相談もできず、孤立無援で、イライラして、逃げ出したいし、鬱っぽい。当然子供を愛せない。これって育児書に載ってる育児ノイローゼそのまんまじゃないかな?育児書はこう書いていた“一人で悩まないで、子供の発する言葉に耳を傾けましょう”・・・いや、それが出来ないからこうなってるんだけど。現実の親御さんたちもそれで悩んでるのかな?”

トムに置いてきぼりになった保育士のジェマも子供に向きあうけどお手上げで、ますます理解できないモノに育っていく。内容が全く把握できない模様だけが流れるテレビ番組に夢中になり、内容の分からない不気味な本に夢中になる。家を抜け出して、知らない誰かに会っているようし、不穏にすくすくと育っていって、どうやら人かどうかも怪しい。なんか全く面白さがわからない子供向けアニメやyoutubeを繰り返し見たり、大人には入れない子供同士の約束やら汚い言葉を覚えたりとかそんな感じだろうか?成長して親が知らない友達が増え、無断外泊をするような感じなのかな?育児書には“理解ではなく受け入れましょう”とあったけれど無理じゃないかな?・・子育てって大変なんだなあ。

トムが穴を掘り続けるのは、育児を避けて仕事に逃避する父親のようにも見える。子をあまり構っていないトムは、子供に酷くあたる。アイゼンバーグは追いつめられるといつもの早口を繰り出していき、ジェマとの溝は深まっていく。

次にどうなるかかわからない状況が繰り返し続いて、状況が何も変わらないという話。人は幸せな家庭を願う。マイホームを手に入れ、子供を授かり、育児や仕事に励む。いや、一か所に縛られ、理解不能な子に苦しめられ、パートナとギクシャクしながら、ローン返済のために働くルーチンに囚われるといった方が良いのかな?その生活スタイルに囚われると、人生は迷宮になるってことだろうか?この住宅街全体が“仕事して結婚して子育てする人の生態ならこの程度の環境作って与えれば問題ないんじゃないの?”っていう考えで作られた環境だと思う。なにもそれは、家だけではなくって、取り合えず作ったバリアフリーの施設やもう少し寄り添ってほしい子育て支援、あまり取得されない育休奨励等に似てる気がした、特に血の通ってなさが。

育児書はこうも言ってた。“理解できなくても、ありのままを愛してあげられる親こそ、お子様にとって最高の親なのです”。子供を持つって大変だなあ。・・子供が人間ならね。
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