あなぐらむ

野獣の青春のあなぐらむのレビュー・感想・評価

野獣の青春(1963年製作の映画)
4.0
大藪晴彦「人狩り」を原作に、鈴木清順が描くもうひとつの「血の収穫」。
坂道を転がる様なスピード感で活劇が弾け、「全ての事には裏と表がある」とでも言わんばかりの戯曲的なセット空間(喧噪と静寂のメリハリ)、随所で生かす横移動撮影は流麗な手品の様。ポップアートの様な色への拘り、炸裂する圧倒的な暴力。

宍戸錠はとにかくスピーディに獣のような動きで惚れ惚れするが、相棒となる江角英明(後にロマンポルノで有名に)の朴訥とした演技もいい。小林昭二(おやっさん)が一世一代の名悪党ぶりを見せるほか、後の「仁義なき戦い」の山守を思わせる金子信雄の怪演も楽しい。
上野山功一が若いぞ。ヒロインには渡辺美佐子と香月美奈子。

脚本は隆慶一郎こと池田一朗と山崎忠昭のコンビ。ウェルメイドな活劇のテンポは「危いことなら銭になる」でも快調だった。
池田一朗はここから「陽のあたる坂道」までを書いてみせられる筆力はさすが。
それにしてもの全部がカチっとハマったかと思えばまた逃げる変幻自在の清順映画術。多分に戯曲的だったり舞踊的だったりするのは、後の作品で色濃くなってく部分だ。