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マシニストのkuuのレビュー・感想・評価

マシニスト(2004年製作の映画)
4.0
『マシニスト』
原題 Machinist.
製作年 2004年。上映時間 102分。
1年間不眠状態にある機械工の男が巻き込まれていく不可解な事件を描いたスリラースペイン・アメリカ合作。
監督はブラッド・アンダーソン。
脚本はスコット・コーサー。
出演はクリスチャン・ベイル、ジェニファー・ジェイソン・リー、アイタナ・サンチェス=ギヨン、マイケル・アイアンサイド、ジョン・シャリアンほか。

再視聴です。

極度の不眠症で1年も眠れず、病的に痩せ衰えた機械工のトレヴァー(クリスチャン・ベイル)。自宅で不気味な貼り紙を見つけ、新しい同僚に出会って以来、彼の周囲で奇妙な出来事が頻発する。
誰かが自分を陥れようとしていると感じたトレヴァーは、疑心暗鬼になっていく。。。

主演のクリスチャン·ベールは役作りとは云え今回見た目からヤバい。
『アメリカン・サイコ』じゃバリマッチョでナルシストの殺人鬼を演じてたけど、今回はその全身の筋肉をケバブしてそぎ落とし食べたんちゃうやろか?って疑うほど。
筋肉を一切削ぎ落とし、将に骨と皮だけになってた。
ハリウッドは美しさに価値があり売り物やと云われるが、逆に醜くなればなったで賞が取れるのかもしれない。
『レヴェナント: 蘇えりし者』で、その姿は観る者の心を強烈に揺さぶるほどの怪演を見せたレオ様はこれで念願の賞をゲット。
『めぐりあう時間たち』でのニコール・キッドマンは美しき自慢の尖った鼻をメイクであら悲しやワシ鼻に改造して賞ゲット。
シャーリーズ·セロンの『モンスター』だって、嗚呼、恐ろしやモンスターみたいなお顔の連続殺人者に化けきって賞ゲット。
天性の美しさにプラスアルファ肉体改造が賞のカギなんかなぁ。
その意味で極めつけなんが、今作品の主人公を演じるクリスチャン・ベール。
彼はこの映画の役のために29キロ減量したそうな。
やっぱり香辛料ふり、ケバブしてそぎ落としたんかなぁ。
やっぱりガラムマサラが決め手かな。
鶏ガラのマネをしてみせるベールはどんなSFの怪物より怖いしホラーに見える。
実際、彼は数ヶ月間、毎日ツナ缶1個、リンゴ1個しか食べなかったそうやし、役作りとは云え天晴れ(扇子を開いて)。
今作品は、映画を見慣れてなくても分かり易い内容で、二転三転、ハタマタ、ドンデン返しを期待してると、相撲の翠富士が得意とする肩透かしを食らう作品じゃないかな。
『罪』ちゅうのが作品のテーマだと思うけど、アイバン=トレバーの影(心理学で云うところの二律背反)が明確に物語の主軸にあり、
トレバーが事故った所やルート666(悪魔の子ダミアン怖い)での分岐、
春を売る人と車に引かれた後のトレバーのアザの位置、
暗喩やキリスト教的なモチーフが分かり易く刷り込まれてる。
それがトレバーの妄想と現実を理解する上で、ある程度ヒントになるんじゃないかな。
罪を前にした人の脆弱性や侵蝕された心の奥底が生み出す狂気が強く心に残る興味深い映画です。
ところで、作中、トレバーは
"不眠症で死んだ人はいない "
と云ってたが、同じセリフは、ひどい不眠症に悩まされ、記憶喪失や統合失調症になる男を描いた別の映画『ファイト・クラブ』(1999年)でも云ってる。
同じく不眠症で悩む小生はやけにその事を覚えてるし、しんどいときでもその言葉に励まされてはいる。
幼稚園児でいられるならケタケタして仕事したないって泣くとこだが大人はしかたない。
サボって映画観てばかりなのは幼児と変わらない。。。
今作品を観て想うのはフランツ・カフカ。
彼は現在のチェコ出身のドイツ語作家で、どこかユーモラスな孤独感と不安の横溢する、夢の世界を想起させるような独特の小説作品を残した小生のすきな作家。
そのカフカスタイルが根底に感じ、妄想と狂気、不眠症、そして罪悪感へと陥る心の動きを描いた、驚愕の不穏なスリラーを展開しています。
ポランスキー監督の『反撥』(1965年)以来、精神崩壊がこれほど恐ろしく描かれた映画はないんちゃうかな。
また、『反撥』も再視聴しよっと。
無知ゆえに知らんだけやとは思いますが。
この幻覚への旅の主人公は、クリスチャン・ベイル演じるトレヴァー・レズニク。
今作品を魅了するのは、痩せこけたクリスチャン・ベイルの演技であり、明らかに今までで最高の演技と云っても過言じゃない。
今作品の舞台はアメリカですが、映画のスタイルはスペインに根ざしてるようにも感じるし、しいては今作品も逢魔の時を巧く描いています。
ショッキングなのが苦手な人には向かないかもしれませんが、フランツ・カフカの領域に踏み込むには絶好の作品だと云えます。
再視聴ですが、個人的には幾度となく観たくなる作品です。
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