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メイキング・オブ・モータウンのalmosteverydayのレビュー・感想・評価

4.0
めちゃくちゃポップでファンキーで、そして最高にご機嫌なドキュメンタリーでした。椅子に座ったまま観てるのがしんどい、気を抜くとすぐ肩が揺れてしまいそうだった。

まずは何より創始者ベリー・ゴーディとその相棒スモーキー・ロビンソンがいかしていて、終始笑いを堪えきれないみたいな調子で歌うように話してるんですね。枯れたおじいちゃん達が過去の栄光をしみじみ振り返る…だなんてヤワなもんじゃなく、その目はずっとギラギラ光ってまるで昨日の品質管理会議のネタでも話してるかのよう。そしてひたすら楽しそう。インタビュー映像の切り貼りがノリもテンポもべらぼうに良いので、プロテニス選手同士の拮抗したラリーでも観ているかのような気分になれます。数々の名曲やおとぎ話のようなエピソードもあいまってめちゃくちゃ楽しい、ダレない飽きない。これほどまでに語り手が饒舌なインタビュー、そうそうお目にかかれないのではないかしら。

アメリカンドリームを体現する成り上がりの数々は片っ端から伝説級のネタの宝庫で、ゴーディの秘書として雇われたマーサがステージに立つチャンスを虎視眈々と伺っていた件なんかはもうそれだけで映画いっぽん撮れるんじゃね?って感じでした。ダイアナ・ロスとひと悶着を経て親密になった経緯、モノクロームが一瞬にして総天然色へと変わるくだりなどはもう初々しさすら感じるほどのベタ演出だったわけですが、よくよく考えてみるまでもなくそれって秘め事だった筈よね…?と思うと若干もにょらん事もないです。

こうして創成期からヒット連発の絶頂期がテンション爆上げにて描かれるおかげで、人種差別や戦争にまつわるあれこれの深刻さがよりシリアスに立ち上ってくるメリハリはお見事でした。当時の関係者の談話だけに頼るのではなく、現役ミュージシャンからジョン・レジェンド(ラ・ラ・ランド出演&楽曲提供)が登場したり俳優のジェイミー・フォックス(ドリームガールズにおけるゴーディ的ポジションを演じた経緯あり)がしれっとコメントしてたりする辺り、単なる思い出話ではなく現代を生きる若者世代への目配りも感じます。エンドロールの社歌を照れて歌わないくだり、可愛かったな。
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