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なぜ君は総理大臣になれないのかのKKMXのレビュー・感想・評価

4.2
 2022年3月現在、立憲民主党政務調査会長である小川淳也のドキュメンタリー。大島渚の息子・大島新が17年小川に密着して作り上げた渾身の一作です。追っかけ17年とはいえ、本作の中心は2017年の希望の党騒動の衆院選ですが。


 小川淳也は街の美容室のセガレとして生まれて、特にエリートらしい育ちはしなかったようですが東大に入り官僚になります。そこから政治家になり、民主党に入ってブイブイ言わせると思いきや自分の選挙区に四国新聞をバックにしたワニ平井という強力な土着議員がいるため選挙に弱く、比例でしか入れないため肩身の狭い日々を送ってました。
 小川は「枝野ほど左でも前原ほど右でもない」と言っているものの、北欧の高福祉社会を是としている様子。左翼のKKMXちゃんから言わせればアンタ左だよ。また、小川は前原とか玉木とかスジの悪い連中(すみませんblacknessfallさんパクりました)としがらみがあり、苦悩が大きい。小川は誠実な性格なので、なかなかビシッと己の意志を貫けないようなのです。
 小川はブレるんですよ、気持ちが。ここが小川の致命的な欠点です。言い方を変えると「俺はイケる!正しい!」という強烈なエゴイズムが足りねぇな、と感じました。


 エゴイズム。個人的な見解ですが、大いなる革命(もちろん負の革命を含む)をもたらす超人は、すべからく圧倒的なエゴイズムを備えていると思ってます。それがカリスマとなっていく。「俺が日本を変えるから何か?」的な揺るがない強靭さが野党から総理を目指すには必要だと思います。その強さの背景に「俺は絶対的に正しい」という微塵も揺るがぬエゴの強さが不可欠でしょう。『刃牙』シリーズのストライダムさんも、範馬勇次郎の強さの根源は圧倒的なエゴイズムと言ってますし。
 現在の圧倒的エゴイスト政治家は小池百合子と橋下徹(コイツ絶対戻ってくる)だと思いますが、圧倒的エゴイストは彼らのような存在(負のエゴイスト)ばかりではないと思います。自分の行為の正しさに一切ブレない確信を持っていれば、それは圧倒的エゴイストになるはず。キング牧師やガンジーなんかもそうでしょうし、映画監督だとヤスミン・アフマドやホドロフスキー師匠なんかは圧倒的な正のエゴイストですよ。

 2022年現在、自民を倒したのは小沢一郎ただひとり(しかも2回)ですが、彼はこの圧倒的エゴイストだったと感じています(ただ、破壊のみにその能力が特化していたのは残念)。そう考えると小川は弱い。
 一方で、本作で描かれた困難を乗り切り、内なる鋼が鍛えられて、自分の方向性にブレが無くなり「俺が絶対に正しい」という圧倒的なエゴイズムを獲得していく可能性も十分にあります。苦悩を生き抜いて獲得した正のエゴイズムは、先に述べた2 人のような怨嗟に基づいたエゴイズムとは真逆の方向性を持つので、正の革命を生み出すポジティヴ・ヴァイブレーションになり得ると思います。


 あと、タイトルにもある疑問ですが、小川は総理大臣になれるポテンシャルはあると思います。エゴイズムが弱く馬鹿正直ではありますが、この男なにしろ愛嬌があります。しかも相当な愛嬌です。この人に好かれる能力はめちゃくちゃアドバンテージだと思います。
 なので、エゴイズムだなんだとケチつけましたが、小川は最終的にいいところまで行ってそれなりの仕事を成し遂げるのでは、と予測しています。

 ちなみに応援演説に来た慶應大の井出教授のアジテーションが最高でした!この人も政治家向きですなぁ!

Get Up, Stand Up, Don’t Give Up The Fight !!
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