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ボブ・マーリー ルーツ・オブ・レジェンドのKKMXのレビュー・感想・評価

4.0
 いや〜やっとこさ復活しました。

 遅ぇ〜けど、新年1発目は今年伝記映画にジャマイカラストライブのドキュメンタリーと話題になりそうな偉人、ボブ・マーリー師匠の公式ドキュメンタリーを鑑賞しました。

 実はほとんど知らなかった師匠の生涯ですが、この1本でほぼ大枠は理解できました。


・幼年時代
 師匠が白人と黒人のミックスであることは知っていましたが、勝手に父親は金持ちでしっかりした人だと思ってました。地元を支配していた階層の高い人だった、と知っていたので。それこそ、師匠は鮎川誠っぽいタイプだと思い込んでました。
 しかし、実際は極貧!父親は確かに階層高いが、一族の中でもよくわからない怪しい人物。師匠母子をサポートする気はさらさらなかったようです。その結果、師匠は想像を絶する貧困と、白人の血故の差別を経験することになりました。電気もないど田舎の集落で過ごした少年時代は過酷で孤独だったようです。

・ラスタ
 その後、キングストンに上京し、働いたりするようになりますが、この頃にラスタに出会ったようです。ラスタは当時の新興宗教で、師匠はガチ信者になります。ドキュメンタリーを観る限り、ラスタ信仰にブレる瞬間はゼロで、生涯を敬虔な信者として過ごしたようでした。劇中では、父不在で育ったボブはラスタに父を見たのでは、との説があり、自分もその説を支持します。師匠にとってラスタは自らを成り立たせる核であり、ラスタがあったからこそ、後年の神懸った行動もできたのでは、と思います。やっぱり、真っ当な信仰心って大事だわ〜。

・ブレイク
 ウェイラーズでデビューした師匠ですが、世界的なブレイクのきっかけはイギリスの白人プロデューサーと組んだことです。この件は、盟友ピーター・トッシュ、バニー・ウェイラーが反対し、彼らは脱退していきましたが、ブレイクという視点で正解だったのは師匠。よりデカい成功のためにコアな連中を切るのはポップスの運命ですね。
 しかし、師匠はまったくセルアウトしておらず、メジャーになってもラスタは捨てないし、政治的な方向性は一切ブレないし、単に活動の規模がデカくなっただけに思えて、ピーターたちの脱退はいまいちピンと来ず。ピーターは白人プロデューサーが気に食わない、みたいな感じでしたが。これ以上の規模で成功すると、三頭政治が単純に難しかっただけなのかも。

・後年は神様そのもの
 政治闘争に巻き込まれての暗殺未遂事件以降、もはや命よりも使命感をベースに生きるようになる師匠。自宅にやってくる人たちに施しを行い、アフリカに渡って音楽を通じた世界平和活動等を実行していきます。「自分ひとりの命ならば、俺はいらない」との名言も。
 一番ヤバいのは、やはり1978年の『ワン・ラブ・ピース・コンサート』。これまでジャマイカは2大政党が抗争しており、それこそ師匠の暗殺未遂のきっかけにもなっているほどに泥沼化していました。しかし、師匠はこのライブ中に、それぞれの政党のボス同士をステージ上で握手させます。
 この時の師匠、なんというか福の神みたいな感じなんですよ。神々しい雰囲気というよりも、内出の小槌持ってる大黒様の亜種、みたいなフレンドリーな神様感がありました。福の神が地上にやってきて、祝祭で歌い踊って、その延長上で対立している政治家が握手する、みたいな流れでしたね。
 あと、ジャマイカなのに政治家は2人とも白人。この状況自体が政治的に問題なんじゃねぇかと、現代的視点だと感じますね。

・病気
 サッカーのケガが原因でメラノーマになるとか怖すぎ!放っておいた結果大事になったので、やはりケガはすぐ治療しないとダメですね。また、ガン診断されてるのに病院行かないとかダメすぎ!寛解しても医者が大丈夫って言うまで定期検診しろよ。使命感強すぎて自分の身体とか後回しになっていたんですかねぇ?この辺は謎でした。

・女性問題
 36年の短い人生で、7人の女性との間に11人も子どもを作った師匠。すげー性豪だ。ここまで神聖な凄みを持っていると、モテも異次元なんだろうなぁとも思いますが(登場する女性はほぼ師匠にベタ惚れする)、なんだかんだと男尊女卑イズムを感じました。結構20世紀の偉人たちは、家庭人として家父長制支持者であるパターンが多そう。キング牧師とかもそうだし。
 登場する女性たち(師匠の愛人や妻)は、みんな師匠を庇って、問題なかった的な発言に終始してましたが、師匠の娘は「母は傷ついていた」と明言していました。当然ですよね。この発言は本作に絶対に必要だったな、と実感。
 あと、師匠晩年の愛人シンディは、余命幾許もない師匠が最後をどう過ごすか的な会議があったものの、女性たちには発言権が無かったことも暴露していました。シンディ的には故郷ジャマイカに帰って安息な日々を過ごして欲しかったが、それを訴えることはできなかったそうです。
 英雄色を好む、の一言で終えてはいけない、現代の価値観から見て批判すべき一面だったなぁ、と感じます。逆にこの時代、この視点から批判されないロケンローラーはまずいないと思いますが(もちろんビルのクソゴミ野郎は別格!はやくクワイエットワンを配信してくれ!)、時代だったと終えずに、ちゃんと批判されるべきでしょうね。当時は許された時代だったが、現代から見ればそれは間違っていた、と。それが人類の進化につながるはずですし。
 ちなみに師匠はスッピン派。ラスタの教えが影響しているようです。ばっちりメイク好きの自分とは趣味が異なりました。


【2024はマーリー師匠イヤー】
https://youtu.be/KW2S8eEdHwk?si=tQR3jk0PqRi8RDZc
ワン・ラブ・ピース・コンサート
 福の神・マーリー師匠がマイクという内出の小槌を振ると、対立していた政治家同士が握手するという奇跡!しかし、この時の師匠はマジ神様だ。ルックスも含めて。キリスト的な感じじゃないのがイカす。日本の民話に出てきそうなルックスですよ師匠。曲は『ジャミング』。


https://youtu.be/0P7t6hRj1Mk?si=-femAc2kyXvpm6NX
Get Up, Stand Up (和訳)
 ボブ・マーリーは歌詞!本作は問答無用のレベル・ソング。現代社会において最も必要なのは、ボブ・マーリーイズムなのではなかろうか。


https://youtu.be/-0PDLj5ovrc?si=-KXV3ERwiiQgudBR
War (和訳)
 以前、『マグダレンの祈り』でも紹介した和訳動画。俺的にこの曲、やっぱりベストですね。
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